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全農 テーマ解説インタビュー

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私たちになくてはならない「食」と深い関わりを持つ全農。名前はなんとなく聞いたことがあっても、その実態を知らない方は多いのではないだろうか。マイナビキャリア甲子園をきっかけに、日本の農業が置かれている状況について知っていきながら、全農の出したテーマと向き合ってほしい。(取材:羽田啓一郎)

お話を伺った方

岡 八寿博さん

福岡県出身。高校生の時の進路指導の先生からのアドバイスもあり、大学は法学部に進学した。東京に上京し、学生時代は新聞社のアルバイトに没頭し、編集部に入り浸っていた。当時、地方は物流網がまだ不足しており、自分が生まれ育った地元や地方へ貢献したいと考え、全農に入会。全農ではエネルギーの安定供給のために全国各地にJA-SSブランドのガソリンスタンドを整備する仕事などに従事。この春から広報の仕事に着任した。

全農とはどういう組織なのか?

ー今日はよろしくお願いします。「全農」という名前はなんとなく聞いたことはあっても実はよく知らない方も多いのではないかと思います。改めて、全農が果たしている役割を教えてください。

ありがとうございます。私たち全農が果たしている役割を簡単に申し上げると「農家が作った国産の農畜産物を日本の皆さんの食卓に安定的に供給する」販売事業、「農家が必要とする生産資材や施設を農家に届けて農業の営みをご支援する」購買事業の二つに分けられます。直接、農家と接点を持ついわゆる地域のJA(農業協同組合)とは異なる法人です。私たち全農は地域JAが農家のために行っている様々な事業のうち、この二つの事業(経済事業といいます)を全国段階で担っている組織となります。

ー必要な資材や施設の供給とはどういうことでしょうか?

農業生産に必要な肥料・飼料・石油・包装資材・農機の調達や配送を農家が各々でやっていては大変ですし、負担するお金も大きくなります。そこで我々が原料を国内外から調達し、工場等で加工して、各地域のJAを通じて農家に供給しているのです。一括して仕入れと流通を我々が担うことで、農家は負担が減り、また安定的に生産資材を仕入れることができます。また農作物の販売も全農がお手伝いしています。農畜産物の直販施設を設けたり、量販店に直接販売もしています。このように、私たち全農は生産から販売まで、食と農に関するすべての物事にアプローチできることが強みです。

ー全農とJAは違う組織、ということでしょうか?

「JA」とは農業協同組合のことで、農家や地域の人たちが出資して組合員となっています。一方、「全農」は全国各地にあるJAを都道府県単位でまとめている連合会の一つ、つまり地域JAは農家組合員が出資者であり、「全農」はJAが出資者である組織ということです。それと、ほとんどのJAは信用事業や共済事業を行っていますが、全農は行っていません。かと言って全く違う組織というわけではなく、日本の農業を支えるという目的は同じです。
こちら(https://www.zennoh.or.jp/about/role/index.html)のページを見ていただけると、理解が深まるかと思います。

日本の農家が抱える深刻な問題

ーありがとうございます、しかし日本の農業はいろいろ課題があると聞いています。例えばどんなものがあるのでしょうか?

そうですね、農業生産者の高齢化や減少など本当にさまざまな課題があるのですが、最近深刻なのは穀物や農家が必要とする生産資材の高騰です。
穀物の中でもコメは国内で自給できるのですが、大豆、小麦、飼料用のとうもろこしは多くを輸入に頼っています。穀物は世界的な争奪戦が激化し価格が高騰しています。生産資材に関しては、日本は肥料の主要原料の多くを輸入に頼っているのですが、これも高騰が続いています。

ーなぜ、穀物の世界的な争奪戦が起こっているのでしょうか?

世界的な人口増加に加え、戦争をはじめとした地政学的な問題ですね。
肥料の原料として大切なリンやカリは中国やカナダ、ロシア等からの輸入に頼っていましたが、ロシアからの輸入を停止せざるを得なくなりました。
また、中国は国内供給を重視するようになっています。中国としてもまず自国の食料安全保障に力を入れているのです。そのような影響などにより価格が高騰しています。
他に皆さんの身近なものでは石油などの高騰も顕著です。農業はもちろん製造業や国民生活にも大きな影響を及ぼしています。

ー確かに報道を見ていても値上がりのニュースは連日続いていますね。

ただ、実は鳥インフルエンザの影響が大きかった卵を除くと生鮮品はほとんど値上がりしていないんですよ。値上がりしているのは加工品などの食料品が多く、野菜やお肉といった生鮮品の価格は実は上がっていません。

ーえ、そうなのですか。値上がりしているものだとイメージで思っていましたが・・・。しかし仕入れ値が値上がりするのに売値を上げないと、農家の利益を圧迫してしまいますよね?

そうなのです。実はそこが大きな課題の一つです。利益が出づらい構造になってしまい、農家の経営が厳しくなり、農業従事者は減少し続けています。売値を上げたいところなのですが、それをしてしまうと需要が減少してしまう懸念があり、ひょっとしたら買っていただけなくなるかもしれない。牛乳は多少の理解が広がって少しだけ値上げができていますが、生鮮品のほとんどは値上げができていないのが現状です。

ー値上がりするとやはり売れなくなるのでしょうか。

そもそも、農作物は差別化が難しいのです。差別化の価値が消費者に理解されづらい。お祝いやご馳走の時はともかく、日常的に食べる食材は基本的に最寄のスーパーマーケットで買い物をしますよね。そしてスーパーマーケット内でもなるべく安いものを買ってしまう人がほとんどかと思います。また、そもそも本当に美味しいとれたての農作物に触れる機会も若者中心に減っています。やはり生鮮品はとれたてが一番美味しいのですが都会だとなかなか難しい。土や植物や虫を触る機会自体も減っています。そんな自然のなかで農畜産物が生産されているのですが、それを実体験として知らない。美味しく質の高い日本の農作物の価値を知る機会が減ってきています。結果、農業人口減少の一つの理由になっているのです。このままでは国産の美味しい生鮮品を食べる機会が減ってしまうかもしれないのです。

マイナビキャリア甲子園全農テーマ攻略のヒント

ー農業の課題の一端がよくわかりました。さて、では今年の全農のテーマについていろいろ教えていただきたいのですが、まずテーマの中にある「未来」はどの程度の未来をイメージすればいいでしょうか?

基本的には自由ですが、あまり先すぎる未来のことをイメージしても難しいので、2030年くらいをイメージするのがいいのかなと思います。実は全農も2030年を想定して、そこから逆算して現在の中期計画を策定しています。2030年頃に日本の生産者が生き生きしている産業になっている。それが全農の考える未来の農業ですが、高校生の皆さんは自由に考えていただいて構いません。アイデアを考えていただく際には、地域JAと全農の果たす役割の違いを理解していただけると考えやすいでしょう。全農のHPには、昨年4月から発行している社内報「Minorinote」や事業の概要をまとめた「全農リポート」新聞に掲載した記事などがありますので、イメージを落とし込んでいく際に参考にしていただければ幸いです。

ー高校生が考える際は全農が実行をする前提のアイデアの方がよいでしょうか?

全農が主語で全農が実施するアイデアでも構いませんし、皆さんが主語で全農の機能を使ったアイデアでも構いません。実際、我々も自分たちだけでは実現が難しいアイデアはベンチャー企業やスタートアップ企業と連携したり、全農の職員がベンチャー企業に出向して新しいことをやることもあります。アグリテックというのですが、農業にもテクノロジーの力が入ってどんどん進化しています。全農の力を使って夢のある日本の未来の農業をイメージしていただければ、どこがやるかは問いません。

ー最後に、マイナビキャリア甲子園に挑戦する高校生にメッセージはありますか?

普段皆さんが召し上がっている米、野菜やお肉などの農畜産物について改めて注目してみてください。自分で見聞きしたり味わったものからアイデアを考えていただきたいですね。私たち全農は昨年からマイナビキャリア甲子園に参加したのですが、昨年の高校生が出していただいたアイデアには本当に驚かされました。実は全農の中にも新規事業を全農職員が考えるコンテストがあるのですが、高校生の皆さんのアイデアもそれに全く引けをとらないアイデアが多かったです。お会いできるのを楽しみにしています。

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