久野、高校やめるってよ 「私、キャリア甲子園にはもう出たくありません」

キャリア甲子園2017に見事決勝進出を果たした久野さんという一人の女子高生がいる。夏のキャリア甲子園イベントで僕は彼女に初めて出会い、ストイックに、また妥協なく自分たちのアウトプットを磨いている姿を見てきた。決勝戦では惜しくも敗退してしまったが、全力でぶつかり、そして敗れた後に流す涙に心を打たれたものだ。

そんな彼女が高校をやめ、海外のUWCに進学するという。国内屈指の名門校を退学し、海外へ旅立つのは何故なのか?渡航前の彼女に話を聞いた。

*この記事は2018年7月時点のものです。
(取材・執筆:羽田啓一郎)

高校を辞めてUWCに進学する理由


羽田:お久しぶりです、キャリア甲子園決勝以来ですね。

久野:そうですね、その節はお世話になりました。

羽田:高校、もうやめたんですよね?

久野:はい、夏休みの部活動を最後にして退学しました。この後UWCの香港校に進学します。あ、UWCの受験の時は推薦状書いてくださってありがとうございました。あんな素敵な推薦状書いて頂いて、ウルウルしちゃいました。感謝しています。

羽田:いえいえ、まあ僕は英語出来ないんで日本語でしか書けませんけど役に立てたならよかったです!

久野:(笑)

羽田:でも久野さんの通っていた高校は国内でも屈指の女子校ですよね。そこをやめる事に抵抗はなかったんですか?

久野:そうですね、実際母には最初反対されました。私、中学3年間を通してずっと真面目で。

羽田:はい、なんとなくわかりますよ。

久野:遅刻もなかったし提出物漏れもありません。ずっと真面目できたから、まあ退学くらいやってみるかって。だからそんなに悩んだわけでもないです。

羽田:久野さんが退学する事を聞いた時の周囲が驚いた顔が目に浮かびます・・・。どうして海外の高校に入りなおそうと思ったのですか?

久野:キャリア甲子園に出ようと思った理由にもつながるんですが、私、勉強しかできないんです。

羽田:言い切れるのはすごいな(笑)。

久野:でも、何のために勉強するんだろうって考えちゃったんです。私の高校では理系は医者、文系は弁護士を目指すのがある意味当たり前みたいになっています。でも親に言われたから、周りがそうだから、みたいなのがすごく嫌で。自分の世界を広げたいなと思ったんです。

羽田:何かそう思ったきっかけはあるんですか?

久野:正直、中学時代は特に問題意識はありませんでした。学校も好きだったし自分でいうのもあれですが、真面目で優等生だったと思います。それで高校1年生に上がったときに英語の勉強をちゃんとしないとなって思って。それでどんな勉強法があるかを調べていたら、海外大学の参考書が英語の勉強には効果的だと聞いて、それがきっかけで海外大学について調べ始めたんですね。そうしたら自分がいかに狭い世界観の中で生きてきたのかを痛感する事になって。

羽田:あ、じゃあ海外大学に行きたいと思ったからじゃないんですね。

久野:そうですね、進路先として東京大学以外に海外大学もあるんだ、と気づいた位です。海外大学に行くことが単純にすごい、みたいな風潮もありますが、それについても「本当にそうか?」と懐疑的ですらあります。でも英語の勉強の一環で海外大の学びを調べているうちに日本からの進学状況を調べるようになって、そうしたら他の日本の高校でももっと先進的な取り組みをしている学校も結構ある事に衝撃を受けたんです。それで、私は勉強だけしていていいのだろうかって。

羽田:久野さん、去年の夏にキャリア甲子園のイベントに来てましたよね。僕、結構久野さんが印象的だったんです。何か、焦ってる子だなあって。イラついているというか、何かに対しての焦燥感みたいなのがありましたよね。

久野:そうですね・・・キャリア甲子園のイベントは1年生の夏の時でしたが、とにかく焦ってました。私はこの先どうすればいいんだろうって。だって私、5年間勉強しかしてこなかったんです。勉強しか才能がない。勉強ができるだけで凡人なんだって。

羽田:いやいや、勉強できるのってすごいことですよ(笑)。

久野:だから勉強以外で自分の得意なこと、苦手なことを知りたいと思って、今まで全く知らないビジネスの世界を知りたいと思ってキャリア甲子園に出たんです。

羽田:じゃあちょっとキャリア甲子園の事も聞いていこうと思います。あれから半年くらい経ちますが、終えてみてどうでしたか?

キャリア甲子園は、もう一度やろうとは思いません

準決勝で勝ち名乗りを受けた瞬間。それまでの苦労とプレッシャーから解放され、涙が止まらなかった


久野:そうですね、結論から言うと、私、キャリア甲子園は二度とやりたいと思いません。

羽田:えっ・・・。

久野:高校生向けのイベントもたくさんありますし、何度も参加出来るイベントもありますが、キャリア甲子園みたいな大変な大会はなかなかないですよ。優勝できなかったけど、もう一度狙おうとは思いませんね。もうやりたくない。

羽田:そんなこと言わないでください・・・。

久野:だってプレエントリーだけして企画書完成までに挫折して辞退するチームも多いじゃないですか。その時点でやばい大会ですよ。

羽田:・・・。何がそんなに大変だったんでしょうか・・・。

久野:色々あります。まず同じ問いに対して半年間向き合う機会自体がなかなかないですよね。しかもその問いには答えがない。受験勉強みたいに答えがあって、正解に辿り着いたら終わりってものでもない。考えれば考えるほど奥が深くなっていって追求してもきりがない。

羽田:まあでも、社会に出たらそんなんばっかですけどね。

久野:そうなんです。ああ社会ってこんな感じなんだって気づけたのはとてもよかった。でも、きつかった。あとはやっぱりチームのメンバーに向き合い続けることが難しかった。

羽田:トップ女子校とトップ男子校の混合チームでしたね。何繋がり?

久野:塾ですね。そう、最初はチームを組むのもなかなか大変でした。色んな子に声かけたけど断られて。でも、一緒に戦ってくれる仲間が見つかった。みんなそれぞれ得意不得意があってモチベーションのアップダウンもあります。そんな中で自分はチームに対してどんな貢献が出来るんだろう、と悩み続けた半年でもありました。

羽田:久野さんは真面目すぎるんじゃないですかね。もっと楽しもう!みたいにならなかった?

全てを注ぎ込む、自分との戦い

決勝戦前の自宅練習の様子。毎日のようにチームメイトと練習と試行錯誤を重ね、全てを注ぎ込んで決勝に挑んだ。

久野:うーん、私にとって、キャリア甲子園への挑戦は自分への挑戦でしたから。だからキャリア甲子園中はずっと戦いでした。特に準決勝前がきつくて。私、インフルと胃腸炎で完全にダウンしちゃったんです。

羽田:ええ・・・。キャリア甲子園最大の天王山である準決勝前でそれはきついですね。

久野:もう立ち上がれなくてチームの会議にも出れないしプレゼンの練習もできない。私は何でこんなみんなに迷惑かけるんだろうって。何のためにこんなことやってるんだろうって何度も悩みました。プレッシャーも大きかったし、もうボイコットしちゃおうかとも正直何度も考えました。でも、ここで負けたらきっと一生負け続ける人生になると思って、歯を食いしばって、自分にできることをやろうと思って。自分の弱さに向き合わざるを得なくなって、でもそれに勝てたことが本当に大きかったと思っています。

羽田:壮絶ですね・・・。でも、その戦いの結果決勝大会に進めました。決勝進出が決まったときは嬉しかったですか?

久野:そうですね、勿論嬉しかったけど、なんかホットした、という感じの方が強かったです。チームに何とか貢献できたなって。まだしばらく一緒に戦えるなと。

羽田:しかしその決勝大会では負けてしまいました。相当作りこんでいたプレゼンでしたが、率直にどう思いましたか?

久野:決勝前は手が震えてて、水も喉に通らないくらいまで緊張していました。でも決勝戦のプレゼンが終わって、私の隣の優勝チームが勝ち名乗りを受けた瞬間は、「そうか」と思っただけでしたね。あんだけ頑張って苦労したのに、報われないことがあるんだな、と。私は負けたんだな、と。

羽田:大会後の懇親会で泣いてましたよね?

久野:泣いてません(きっぱり)。でも、今思うともっとこうすればよかったんじゃないかって思う事はたくさんあります。もっとやれたんじゃないかって。細部にこだわりすぎてて全体を見れてなかったなとか。だから悔しいなと思う気持ちはありますね。

羽田:じゃあもう一度挑戦してみては・・・?

久野:それはないですね(きっぱり)。あそこまでの戦いはもうできません。でもそれだけ、私の全てを注ぎ込んだ戦いでした。悔しいですけど、自分なりに納得はしています。

羽田:そうか・・・。キャリア甲子園、ハードル高すぎるんですかね・・・。もっと楽にしたほうがいいと思いますか?

久野:いや、キャリア甲子園はこのままでいいと思います。どうか高校生にとって高い壁であり続けてほしい。私、高校1年の時に自分を試す舞台としてどこがいいかって色々探した結果に辿り着いたのがキャリア甲子園でした。キャリア甲子園はスケールも大きくて高校生にとってやはり最高峰だと思います。気軽に参加できるイベントなんて沢山あるから、キャリア甲子園は是非、今のままハードにしましょう(にっこり)。

羽田:分かりました(笑)。まあ僕もそんな敷居下げるつもりもありませんが!では最後に、UWCについて教えてください。

UWCとは?そして今後の目標

UWC生とWorld Scholar’s Cupにも挑戦し、グローバルラウンドに進出。

久野:一言で言うと世界中から選抜された高校生が集まる高校、ですね 。世界中に校舎があって、私は香港に進学します。キャリア甲子園2016で優勝した斉藤先輩はロンドン校に進学されましたよね。

羽田:どうすれば進学できるんですか?

久野:UWCの日本協会の試験を受けなくてはなりません。国語・数学・英語・小論文の試験があって。それでその次は面接とディスカッション、英語の面接もあります。

羽田:おお、なかなか倍率が高そうですね・・・。先ほどお母さんは反対だったと聞きましたが、説得は大変でしたか?

久野:幸い、父がとても応援してくれていたんです。もともと、海外の大学に進学したほうがいいんじゃないかと考えていたそうで。そして母も、最初は反対していましたが何度も話し合って最終的には応援してくれるようになりました。とても感謝しています。

羽田:UWCではどんな生活を送りたいですか?

久野:そうですね、勉強をしっかりやりたい、と言うのも勿論ありますが、やはり世界中から同世代の優秀な子が集まってくるので、色んな価値観に触れたい、と言うのが大きいですね。先ほどもお話ししましたが、私はずっと真面目に生きてきました。それを変えようとは思いませんが、ただ単に真面目なだけじゃない人生の楽しみ方もあると思うので、自分の幅を広げたいですね。

羽田:では最後になりますが、将来のビジョンとかってあるんですか?

久野:はっきりと決まっているわけではありませんが、国際機関で働きたいな、とは思っています。私、生きている理由をしっかり見つけられる仕事がしたくて。社会に貢献できる仕事ができれば、それは私が生きている理由になるんじゃないかって。

羽田:なるほど。

久野:今後は目先の利益にとらわれる人にはなりたくないな、と思います。短期的なメリットじゃなくて、自分の軸をしっかりと守れる大人になりたいなと。
ありがたいことに私、色んな人からすごいねと言ってもらえるんですけど、自分ではそんな風に思えていません。何故かと言うと自分の軸がまだあるわけじゃないからです。それを見つけて何かを軸にして生きていけたらなとは思っていますね。

羽田:わかりました。ありがとうございます。香港でのご活躍、応援しています!

久野:はい、キャリア甲子園2018、香港から楽しみにしていますね!