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キャリア甲子園2020で見事ファイナリストとして決勝大会に進出した「そばかす」。2019年大会にも挑戦し、その時はプレゼン動画審査で締め切りに間に合わず涙を飲んだという。リベンジを期して挑んだ2020年大会では見事決勝大会進出し、審査員特別賞を受賞。二人チームのそばかすに、プレゼン動画審査以降のヒントを伺った。
(取材・執筆:羽田啓一郎(キャリア甲子園運営事務局)
そばかす、2年目の挑戦で決勝大会へ!
ー改めてよろしくお願いします!
二人:よろしくお願いします!
ー二人は高校1年生の時にキャリア甲子園2019に出場してプレゼン動画審査に間に合わなかったんですよね?
平野:そうですね、、、動画自体はできていたんですが、動画の編集に凝りすぎてしまって、締め切り当日ギリギリまで作業していたら動画ファイルの書き出しがうまくいかなくて・・・。
重谷:そうそう。結局締切時間に間に合わなくて、それで断念したんです。せっかく書類審査は通過したのに、ギリギリ行動はやはり良くないですね。
ーキャリア甲子園は締切厳守ですからね。。。でも、そもそもどうしてキャリア甲子園に出場しようと思ったんですか?
平野:私たちの高校は中高一貫なのですが、中学生の時は課外活動を学校自体が推してることもあって課外活動の機会が多かったんです。課外活動をしていると学校では出会わないような人と話せて自分の世界が広がって、自分が何かを学んでいく過程が楽しかったんです。でも高校に上がったらその機会が少なくなって物足りないなと。それでたまたま知ったキャリア甲子園に興味をm持ったんです。
ー二人は知り合いだったんですか?
重谷:いえ、中学受験のために通っていた塾は一緒だったんですけど普段からそこまで交流があったわけじゃないですね。ただ、お互い課外活動に積極的に取り組んでいることは知っていてそこでの交流は幾らかあったので、チームを組むことになりました。チーム名はあみだくじで決めたくらい、適当なノリでしたが・・・。
ーいい具合に気が抜けているのがお二人はいいですね!しかし、どうして2年目にも挑戦しようと思ったのでしょう?
平野:うーん、確かに1年目は失敗しましたが、企業の課題に対してアイデアを考えてそれをアウトプットしていく過程が単純に楽しかったんです。
重谷:キャリア甲子園に挑戦する人たちのモチベーションはさまざまだと思いますが、僕はみんなで話し合って何かを作り上げていく、その過程が楽しかったんですよね。100万円の海外旅行券も欲しいといえば欲しいですけどそれよりも純粋にその過程が楽しかった。2年目はどこまで行けるかな、と。
ーしかし2年目は見事に決勝大会進出。二人の実力が本物だということだと思うのですが、二人の強さの秘密を知りたいなと思いまして。
デザイン思考を元に、キャリア甲子園を戦ったそばかす
平野:まず言えることは、2年目は動画のファイルは軽くしましたね(笑)。僕たちはPremireという動画編集ソフトを使っているのですが、1年目は動画編集ソフトの中でスライド自体を作っていたんです。イラストレーターでデザインした素材をPremireの中で動かす、という。でもその結果ファイルが重くなってしまったので2年目はその反省を活かしてKeynoteで動画自体を収録して、それをPremireでちょっとだけ編集する、という方法に変えました。
ー作業フローも凝ってますが、少し複雑ですね。
平野:1年目は自分達が言いたいことを表現することにこだわってしまいました。それが楽しくて夢中になってしまったんですが、良く考えたらそれじゃ自己満足ですよね。2年目は作り方も変えましたが、作品を作り込むのではなく、ちゃんと伝わることを大切にしようと思いました。
ー作業内容を変えただけでなく、考え方も変えたということですね。僕は二人のアイデアはすごく好きだったんですが、あれはどうやって考えたのですか?
平野:私たちはもともと課外活動のイベントでデザイン思考を学んでいて、それがすごく面白かったんです。せっかく学んだデザイン思考を実践で活かすチャンスだと思って、学んだことを実践してみました。
ーデザイン思考!この記事を読んでる方に向けて、デザイン思考について簡単にご説明いただいていいですか?
平野:私たちが解釈したデザイン思考は、相手やユーザのことを徹底的に考えて、機能や体験に至るまであらゆることを設計すること。今回、僕らが考えた「Dream Baton Jarney」は高齢者の旅の思い出を大学生に繋いで大学生が世界に旅をしやすくする、というWebサービスなのですが、僕たちは利用ユーザ一を具体的に絞り込んで、その想定ユーザの人格を浮かび上がらせ、その人が欲しそうなアイデアを考えていきました。
重谷:そう、最初は大学生重視の企画だったんです。ユースホステル協会のテーマにも「若者」って入っていたので、「どうすれば大学生が旅に出てくれるかな」という視点で企画を考えていきました。でもこの企画は高齢者の存在も必要です。それなのに学生のメリットだけで、高齢者は使ってくれるの?という話になっていって高齢者ペルソナの必要性が出てきました。
ー学生のペルソナはイメージがしやすそうですが、高齢者のペルソナってどのように作っていったんですか?
平野:私のおばあちゃんをペルソナにして人格を作ってそこからアイデアを考えていきました。私がおばあちゃんに電話して、その会話の様子を重谷くんが横で見てて、私のおばあちゃんの人格・価値観を作り上げていったんです。そこに一般的な高齢者の生活習慣を調べてプラスしていきました。私の解釈するデザイン思考って、本人が気づいていない困ってることを客観的視点から見つけることだと思っていて、その手法を実践したんです。
重谷:準決勝まではユースホステル協会を相手のプレゼンなので、「テーマにある通り、大学生が旅に出る企画」でよかったんです。でも決勝大会の審査員は職業も性別も年齢もバラバラで。そこで審査員を出資者だと捉え、出資者がどうなれば出資してくれるかという視点でアイデアを加えたり脚本も完全に変えていきました。企画自体は大きくは変わっていませんが、見せ方は抜本的に変えましたね。同じ企画を切り取る視点を変えた、というか。
決勝大会では審査員特別賞を受賞
ーデザイン思考、理屈では理解していても実践するのは難しいのにすごいなと改めて思いました。そうして昨年は涙を飲んだプレゼン動画審査を突破し、準決勝に進まれたわけですが、準決勝は自信ありましたか?
平野:過去のキャリア甲子園のプレゼン動画を見ていると、どのチームもキャッチーで元気っぽさがあったのですが、私たちにはそれがないな、と思ってました(笑)。なのでまさか勝てるとは思ってなかったですね。
重谷:そうそう、プレゼンの熱量がすごいところもあったけどうちらはそれがないなーと。準決勝で私たちは真ん中くらいの出番だったので、それまでのプレゼンを見てどうしようと一回考えました。でも似合わないことはやめよう、となっていつも通りのプレゼンをしようと。
平野:準決勝の審査員を務めるユースホステル協会の方々がtwitterで呟いていたんですよ。審査員の方はどんな方なんだろう、と色々調べて、他の人には伝わらなくてもいいから審査員には絶対届けようって。最終的に勝つことができて、本当に嬉しかったですね。
ーそしてついに決勝大会。決勝大会は感染対策を取った上での対面開催でした。京都から東京までお越しいただいたわけですが、どんな準備をして臨みましたか?
重谷:僕たちはとにかく審査員の宇田さんだけをスコープしていました。過去の決勝大会動画を見ても宇田さんの質疑応答の対応がすごく重要な鍵を握っていると思ったからです。宇田さんのことを知っている人がいないか、とfacebookで知人に呼びかけて調査をしたりしていました。ちなみに、決勝大会で戦うライバルチームのことはほとんど気にしていなかったです。そもそも、与えられたテーマが違うので比較のしようがないと思っていました。なので僕は他のチームの内容と比較するのに時間を割くよりも、自分たちのアイデアの質を上げることに時間をかける方がずっと大切だと考えて作業に取り組んでいました。どんなアイデアを出されているのかを確認したのも、行きの新幹線の中でした(笑)。
平野:宇田さんを意識していたので、審査員特別賞に入れたらいいな、とは思っていました。そうしたら本当に審査員特別賞で嬉しかったんです。でも、終わってから思ったのは、やはり優勝じゃないんだなってことで。特別賞をもらえたということは、ある程度私たちのプランは評価してくださったということですが、では優勝まであと一歩何が足りなかったんだろうと後から振り返りました。
重谷:改めて振り返ると、審査員からの質疑応答は失敗したなと感じています。いただいた質問自体は想定していたことだったし、返していたとは思います。ただ、あっさり淡々としゃべっただけでした。優勝したぐーふぉのような熱量はありませんでした。僕たちのチームは生放送視聴者が採点するスコアも満遍なかったんですよね。審査員に理解してもらうことばかり意識していて、全体に対して届け、人の気持ちを動かす、という視点が足りていなかったなと思いましたね。
平野:でも、宇田さんは意外と優しかった(笑)。過去の大会動画はたくさん見ていたから、宇田さんってもっと怖い人なのかと思ってビクビクしていたので、すごく優しい方でほっとしました。私たちは審査員特別賞の副賞として、宇田さんの個別メンタリングをZoomでやっていただいたんですが、すごく親身に、カジュアルに相談に乗ってもらってこんな人だったんだ!って思いました。
ー色々振り返っていただいてありがとうございます。改めて、キャリア甲子園全体を通して感じたことは何でしたか?
平野:私はとにかく「ユーザの思い」を大切に企画を考え、プレゼンを作っていきました。高齢者の方の旅が明るい思い出になって欲しい。私たちのアイデアはその思いをを叶えるため手段だったので、アイデアにあまり執着はありませんでした。なので、色々な人がフィードバックやアドバイスをくださり、その度にアイデアを壊して、練り直す、、そうやってアイデアが進化していくのが楽しかったです。あと、お父さんの友達も決勝大会の生放送を見ていてくれたみたいで「昔行った旅を思い出した。コロナだけど旅に行きたくなったよ」とコメントをくださって、本当に嬉しかったです。
重谷:僕もやはり他の方々のサポートのありがたさを痛感したのが、キャリア甲子園で学んだことですね。特に準決勝大会から決勝大会まで、ユースホステル協会の担当者の方や学校の先生には本当にたくさんのサポートをいただきました。もちろん、中には厳しいご意見もあったんですが、否定的な意見に耳を傾け、向き合っていったからこそ自分たちの思い込みを切り崩すことができて最終的にはいい企画になったと思います。もし他の人の意見を聞く姿勢がなかったら決勝大会には残れていなかったと思います。色々な人の思いを繋がせていただけたことが、本当に嬉しかったですね。
「そばかす」決勝プレゼンフル動画