キャリア甲子園2021に初参加となるコーセーコスメポートが提示したテーマは「Z世代の価値観を活かした新たなプロモーション手法」。同社が力を入れるサンカットブランドを幅広い年代に支持してもらうための提案を期待しており、「優れたアイディアは高校生の皆さんと一緒に実現に向けて本気で検討したい」という。サンカットブランドのブランディングを担当する對馬さんにその思いを聞いた。
お話を伺った方
コーセーコスメポート株式会社 ブランド事業部 企画二課 對馬 広之さん
青森県出身。進路選択時に、さまざまなことが学べる岩手大学の人文社会科学部に進学。大学在学中に広告業界に興味を持ち、人材広告会社に就職。その後、人々の生活に溶け込んでいる身近な商品に関わりたいという思いでコーセーコスメポート株式会社に転職し、営業やマーケティング業務を経験。
いいアイディアがあれば本気で実現したいと思い、キャリア甲子園に参加
ー今回、キャリア甲子園に参加した理由と、テーマにこめた思いを教えてください
まず何より、高校生の皆さんが考えるアイディアに純粋に興味がありました。キャリア甲子園は全国の高校生が自分たちの力で企業の課題に取り組んでいますよね。私たちも日々新しいアイディアを考えていますが、「サンカット」という高校生の皆さんにも使っていただける商品をキャリア甲子園に出場する高校生の皆さんはどう考えるのか。非常に楽しみです。
ー「Z世代」という言葉が印象的なテーマですが、どうしてあえてこの言葉を選んだのでしょうか?
1990年代中盤までに生まれた世代を「Y世代(ミレニアル世代)」と呼ばれたりしますが、Z世代とは主に1996年以降」に生まれた世代のことを言います。SNSが当たり前にある生活を過ごしているZ世代の皆さんは価値観や行動が多様化しており、企業としても今までのやり方、方法に囚われずに新しい手法にどんどん挑戦していきたいのです。
ーまさに高校生自体がZ世代ですものね。
そうですね、特に最近の高校生は画像、テキスト、動画問わずSNSを当たり前のように使っていますよね。これってすごいことだと思っています。SNSに投稿して誰かに見てもらうということは、皆さんは「コンテンツを作っている」と言えると思っていて。想像して何かを作り出す能力は、私たち大人世代とは比べものにならないほど凄まじいものを持っているんです。頭にあるイメージを形にするスピード感とコンテンツ力は、今の高校生には尊敬すら覚えてしまう部分があります。
ー高校生のアウトプット力に本気で期待されていることが伝わってきます。
キャリア甲子園の話を聞いた時、若い世代に向けたアイディアは若い人に考えてもらった方がいい、と社内で話題になりました。良いアイディアがあれば本気で実現したいと思っています。私たちは世界に向けてサンカットというブランドを展開したいと考えています。キャリア甲子園に参加される高校生の皆さんと、世界のお客様に向けて一緒になって一つのブランドを作って大きくしていきたい。本気でそう思っています。
サンカットとは?その展望と課題
ー今回テーマになっているサンカットについて教えてください。
私たちコーセーコスメポートは、高い商品価値を持つ商品をお求めやすい価格で多くの方に提供していく、という使命を持っている会社です。その中で今回は高校生の皆さんにも使っていただきやすいサンカットをテーマにさせていただきました。サンカットは全身徹底ガードができる日やけ止めブランドで、9年連続で売上1位を誇るスプレー商品をはじめとし、多くのお客様に支持いただいています。日やけ止め商品の中でもスプレーとして発売したのは当社が先駆者といえます。
ー商品はどのように考えられて世に出ていくのでしょうか?
世の中のニーズを踏まえて「こんな商品があった方がいいんじゃないか」という企画が始まり、そこから1年くらいかけて製品を作っていきます。でも当然ながら世に出ない企画、アイディ
アはたくさんあります。本当にお客様が求めているのか、そしてコーセーコスメポートとして自信を持って発売できる商品なのか。こういった視点で検討されて、商品化していきます。そうそう、最近発売されたサンカットプロディフェンスは世界初の商品で、日やけだけでなく汗やニオイも抑えるのですが、これには例外的に着想から発売まで8年近くかけて開発されています。そこまで情熱を持ってこだわって商品を開発しています。
ー8年・・・!今の高校1年生が小学校低学年の頃から作っている、と考えるとすごいですね。ではサンカットの課題はなんでしょうか。
大きく三つあると思っています。まず若い世代にもっともっと知って使っていただきたいということ。二つ目は性別問わず使っていただくこと。女性だけでなく、男性にも日やけ止めの必要性を知っていただきたい。そして最後は世界の方々に使っていただくこと。この3点が重点的に取り組む課題です。
ー1つずつお聞きします。まず若い世代ということですが、サンカットを購入されるお客様の年齢層は上、ということでしょうか?
はい。先ほどもお伝えした通り、サンカットは多くの皆様に支持いただいていますが、40代の方が多いのが正直なところです。でも高校生の皆さんでも例えば運動部の方は部活の時にも使っていただけるはず。今後、もっと若い皆様にも使っていただけるブランドにしていきたいのです。
ー高校生のマーケティングの勉強にもなると思うのでお聞きしたいのですが、購買者の年齢はどうやって調べるのですか?
これは当社に限った話ではありませんが、ドラッグストアなどの小売店さんの販売データを参考にさせていただいています。またSNSのハッシュタグなどもチェックしていますよ。「サンカット」や「#日やけ止め」、またCMで起用したタレントさんの名前などで検索して流れてくるツイートは目を通してお客様の反応はチェックしていますし、分析ツールを入れて定量的な分析もかけていくこともしています。
ーマーケティングとはそういうこともしていくのですね・・!では二つ目の「性別問わず」ですが、最近は男性でも日やけを気にする人も増えていますね。
そうですね、男性も日やけを気にされている方が増えてきましたね。色白の肌に憧れる男性も増えているようです。でも見た目だけの話ではなく、実は肌の一番の老化の原因は紫外線と言われています。だから肌のことを考えたら紫外線はカットしたほうがいいのです。今後は性別問わず、ジェンダーレスにも対応していくのが世界の潮流でもあります。サンカットも、世代や性別問わず、家に当たり前にあるものになってほしいのです。
ーそして三つ目。世界展開も意識されている、と。
はい、世界です。”美意識”は世界中に広がっていっていますよね。当社もサンカットを世界標準にしていきたいと考えています。特にアジア、アセアン地域は経済発展も著しく、大きなチャンスがあると考えています。ただ、世界展開はまさに今スタートしたところなので現時点ではまだお伝えできないことが多くあります。逆に、これからの分野なので若い世代のアイデア、考え方次第だということでもあります。
キャリア甲子園に挑戦する高校生も参考にしたい、マーケティングの考え方
ー既に有名なブランドでも、更に新しい価値を生み出そうとされてるのが驚きでした。しかし最近はコロナで外出自粛もあり、サンカットは影響があったのではと思いますが、いかがですか?
そうですね、コロナ禍はサンカットにとっては大きな影響がありました。何しろ外出自粛ですからね・・・。海外のお客様が日本に観光に来てサンカットをお買い上げいただくことも多かったのですが、それも無くなりました。
ー日やけ止め商品はそもそも販売が難しそうですね。
でも、だからといって落ち込んでいてはいられません。そうした環境の中で何ができるか、と考えるのがビジネスパーソンです。外出ができない代わりにオンライン会議やオンライン授業が増えましたよね。そうなると皆さんが気にされるのがオンラインでの自分の表情の写り方。サンカットはお客様のニーズに合わせてさまざまな商品ラインナップを展開しているのですが、その中にトーンアップ効果のある商品もあります。オンラインミーティングの時もサッと使えますよ、とご提案しました。
ーなるほど!
また外出時にマスクを着用するのがスタンダートとなりましたが、そうなると気になるのがマスク焼け。これにもサンカットは対応します。このような新しい使い方を店頭のポップやSNSのハッシュタグなどで表現し、お客様に知っていただく。環境が変わっても新しい価値を提案していくのが私たちコーセーコスメポートの考え方です。
ー確かにコロナで落ち込んでばかりもいられませんもんね。他に高校生が参考にできる考え方などはありますか?
「どこで売るか」は皆さんにも是非注目いただきたいポイントです。皆さんは普段、どこで買い物をしていますか?同じ商品を買うにしても、気分や目的に応じて買う場所を使い分けていませんか?
ーどういうことでしょう?
同じ商品でも売る場所によって特性が実は色々違うのです。例えばサンカットは販売本数は圧倒的にドラッグストアが多いですが、話題になりやすいのはバラエティショップです。皆さんも経験があると思いますが、目新しくて面白そうな商品がたくさん並んでいますよね。バラエティショップだと少し高くても目新しいものだったら売れますし、そこから火がついてブームになっていくのです。サンカットスプレーも、当初バラエティショップで話題になっていた日やけ止めスプレーを、皆様の手に取りやすいデザインや販売価格にして、ドラッグストアはじめ、世の中に広がっていきました。皆さんはどこで流行をキャッチしますか?どこで新商品に出会いますか?皆さん世代の価値観、行動パターンを踏まえて提案してほしいな、と思いますね。
ーちなみに、今回は商品自体のアイディアを出してもいいのでしょうか?
悩ましいところです。絶対にNG、というわけではありません。でも冒頭申し上げた通り、私たちは皆さんのアイディアを本気で実現したいと思っています。商品開発になると複雑な要素が絡んでしまい、面白いアイディアでも実現できないことが増えてしまいます。なので、絶対NGではないですが、どちらかというと皆さん世代の価値観や行動パターンを踏まえたマーケティング施策を考えていただいた方が実現性は高まるな、と考えています。
ーそれでは最後に、キャリア甲子園に挑戦する高校生にメッセージをお願いします。
ブランド、マーケティングに興味がある方は、いかにお客様のことを想像できるかが重要です。データだけではなくて、当事者となって考えてみる、ということが大切。パッケージの言葉、色、お客様にどのように見えるのか。思いつきじゃなくて買ってもらう人の立場を想像していくことがマーケティングで一番大事なのです。自分がものを買うときに「私はなぜこれを買うのかな」と気をつけて見てみると違うものが見えてきます。友達はまた違うものを買ったのならその違いは何か。
一つの商品がどのように売れていくのかを考える癖をつけてみて欲しいですね。消費者に「共感」し「寄り添う」ということが考えられると、皆さんの周りの商品やコマーシャルももっと面白く見えると思います。当社のテーマに取り組んでいただき、そうした新しい気づきを得ていただけるなら光栄ですね。