今年もセコムがマイナビキャリア甲子園に参加する。「セキュリティ」というイメージが強いセコムだが、実は非常に高度なテクノロジーをビジネスに活用している企業だ。そんなセコムが今年出題したテーマには「happy」という言葉が。その真意について聞いてみた。(取材:羽田啓一郎)
お話を伺った方
沙魚川(はぜかわ) 久史さん
広島県出身。幼い頃から新しいものが好きで、小学生の頃からプログラミングを始める。既存の物事を覚える歴史が苦手で、それよりも新しい物事を作りたい、と考えて理系のモノづくりの道へ。大学院の研究は終わりがなく、研究を続けるうちに四つの大学院を卒業している。日本のGDPの70%はサービス産業なのに工学的には確立されていないところが面白いと思い、サービス産業で研究所を持っているセコムに入社。現在、セコムのオープンイノベーション部門の責任者を務める。
福島 朝美さん
北海道出身。高校時代はテニス部に所属。理系科目が得意ではなかったため文系を選択し、大学では法学部に進学。大学でもテニスを続けつつ、ホテルのホールスタッフのアルバイトに取り組む。暮らしに関わる仕事に就きたいと考え、セコムに入社を決めた。過去のマイナビキャリア甲子園も担当した後、出産を経て今年5月から復帰。家庭と仕事の両立は大変だが、気持ちの切り替えができ忙しくも楽しい毎日を過ごしている。現在、オープンイノベーションチームに所属。
木立 友里香さん
神奈川県出身。高校時代はミュージカル部に所属していた。中学生の時にカナダに行き、英語が好きになったことで将来留学したいと考え、大学では日本を世界の視点から学ぶことができる国際日本学部を選択。コロナ禍で大学の留学プログラムが中止になってしまったが、休学し自力でカナダへ留学した。セコムは説明会で色々な質問に正直に答えてくれる社風に惹かれ入社を決めた。現在、オープンイノベーションチームに所属。
昨年の高校生に感じた、成長ポテンシャル
ー今年もよろしくお願いします。今年で4回目の参加となりました。昨年のセコム代表HIGH TIDEは特別賞を受賞されています。昨年はいかがでしたか?
沙魚川:実は昨年のHIGH TIDEはプレゼン動画審査時点では決して高い評価ではなく、ギリギリ合格点だったんです。準決勝では他のチームも素晴らしかったのですが、動画審査から大きくアップデートしたHIGH TIDEの成長ポテンシャルを期待して代表チームに選ばせていただきました。

ーどのような点で成長ポテンシャルを感じたのでしょうか?
木立:プレゼン動画審査から準決勝までの伸び代が素晴らしかった点です。プレゼン動画審査後、HIGH TIDEは私たちのフィードバックを自分たちなりに解釈しながら、準決勝でさらに魅力的な提案をしてくれました。またそのプレゼン後の質疑応答でも、ただ聞かれたことだけに答えるのではなく、議論を経てさらに魅力的なアイデアに昇華させることができそうな回答をしてくれるのです。アイデアやプレゼンの内容はもちろん大切ですが、昨年はどのチームも素晴らしく、総合的な判断で選択をさせていただきました。
沙魚川:ただ昨年度大会は準決勝で敗退したチームも、準決勝の終了後に自分たちに何が足りなかったのかなど積極的にフィードバックを求めてくれて、私たちとしても非常に有意義な意見交換をすることができました。コンテストなので残念ながら結果は出てしまうのですが、敗退しながらも成長しようとする皆さんの熱心さに心打たれましたね。そのため、昨年は準決勝まで頑張ってくれた皆さんをセコムのヘリコプターでの東京周遊ツアーにご招待し、そこで慰労会をすることができました。今年もどんな高校生とお会いできるのか、とても楽しみにしています。
木立:私は昨年初めてマイナビキャリア甲子園に関わらせていただいたのですが、こんなにスポーツのように熱くなれるものだとは思いませんでした。マイナビキャリア甲子園を通して成長している様子が感動的で、本当に素晴らしい大会だったと思います。
セコムのサービス開発のポイントは「気持ちや感情が動くこと」
ーありがとうございます。それでは今年初めてセコムのテーマに取り組む方のためにも、セコムという会社について教えてください。一般的にはホームセキュリティという印象が強いと思います。

沙魚川:そうですね、皆さんが聞いたことがあるセコムは警備、セキュリティというイメージかもしれませんが、それだけをやっている会社ではありません。実はセキュリティ事業の売上はセコムグループ全体の約半分で、防災やメディカルなどさまざまな事業を手掛けています。
福島:セコムはセキュリティに限らず「『安全・安心』を社会にお届けする会社」です。そしてそのために高度なテクノロジーを駆使しています。セコムは1962年に日本で初めての警備保障会社として創業し、当時は警備員が各所を巡回して安全を確認する、ということをしていました。ただそれでは限界がある、と創業4年目にはセンサーとネットワークを活用したオンラインセキュリティサービスを開始したのです。
沙魚川:お客様施設に警備員ではなくセンサーを設置することで、センサーが変化を察知し、それをネットワークに乗せて監視センターに集約することに成功しました。これによってお客様の契約が増えても、それに合わせて社員を増やしていくということではなく、技術の力によってスケールを図ることが可能となり、広くさまざまなお客様に導入いただけるようになったのです。さまざまなセンサーの技術とネットワーク、この二つを生かして事業展開をしているのがセコムです。
ー想像以上にテクノロジーを活用しているんですね。では今年のテーマについても聞いていきたいと思います。テーマに「5年後」という言葉が入っていますが、5年という時間の区切りにした理由を教えてください。
沙魚川:リアルな想像ができる、ほどよい未来が5年という時間軸だと考えているからです。今現在の話は、私たち大人がすでにいろいろと考えながら動いています。だから今できることを高校生の皆さんに考えてほしくない。だからといって未来過ぎる話では何の現実味もなくなってしまう。
福島:大切にしたいのは、皆さん自身が何を考え、何を感じているかです。ネットで調べて出てくる社会課題ではなく、皆さん自身の考えを起点に考えてほしい。主人公はあくまで皆さんや皆さんの周りにいる人たちです。自分ごととして考えてもらうためにも「5年」という時間設定にしました。

ーありがとうございます。では次に「100×happy」というキーワードはどうでしょうか?
沙魚川:私たちが所属しているオープンイノベーションチームは新規事業開発を行っているのですが、その中で大切にしているのが「人の感情が動くこと」なんです。ただ単に便利なだけの商品では人は使わない。例えばテレビのリモコンは様々な便利なボタンがついていますが、全て使いこなしている人は少ないですよね。高校生の皆さんに考えていただきたいのも、ただ単に便利な機能ではなく、人の気持ちや感情が揺れ動くアイデアです。この想いを「happy」という言葉で表現しました。
木立:今、社会ではウェルビーイングが重要視されています。ウェルビーイングとは「社会みんなが誰一人取り残されることなくよりよく生きていく」という考え方で、政府も推進していますし、様々な場面でウェルビーイングをテーマとした取り組みが行われているのを目にする機会もあるかと思います。ただ、今回のセコムのテーマは“広くあまねくみんな”ではなく、“あなた”がどう思うかを大切にしてほしい。もちろん、ウェルビーイングの考え方を否定しているのではないですが、今回においては個々の感情が動いてhappyを感じられるようなアイデアを考えてほしいと思っています。
ー感情が動くサービスとは、例えばセコムだとどのようなものがありますか?
福島:高校生の皆さんもイメージしやすいのが人気漫画の主人公とコラボした「AIルフィ」です。これはセコムのバーチャル警備システムを活用し、みなさんご存知の人気キャラクター「ルフィ」がAIによる自律対応で来訪者への応対をしてくれるものです。アニメ版の声優さんにもご協力いただき、自然な合成音声でその場その場でAIが自律生成した会話ができるのです。バーチャル警備システムというセキュリティの価値を超えて、人気キャラクターが目の前で自分と会話してくれるというのもセコムらしい発想なのです。
セコムのテーマに挑む高校生へ
ーただ単に便利なだけではなくユーザの心が動く、という意味がわかりました。他に高校生に期待したい考え方などはありますか?

木立:やはり新規性は求めたいですね。テーマにもある「あんしんを再定義」もいろいろな捉え方ができるはずです。安全と安心は違う意味を持ちます。安全というのは客観的に確認できる状態のことを指しますが安心は主観的な心の価値、精神的なことを指しますよね。今回皆さんに考えてほしいのは後者です。ただ社会環境の変化によって「あんしん」も変化しています。皆さんは何を不安に思い、何に安心を感じるのか。チームメンバーはもちろん周囲の人たち、そしてもちろん自分自身に問いかけながら皆さんの考える5年後の「あんしん」を考えてください。
ーありがとうございます。では最後に高校生へのメッセージをお一人ずつお願いします。
木立:高校生の皆さんにはこの先まだまだいろいろな可能性があります。だからこそ高校生のうちにやれることを全部やってみてください。マイナビキャリア甲子園に出ることに迷っている人もいるかもしれませんが、高校生のうちに新しいビジネスを考える経験自体がなかなかないチャンス。まず企画書を出してみるというだけでも良い経験になります。マイナビキャリア甲子園じゃなくても、とにかく新しい挑戦をしてほしいですね。
福島:高校生でないと気付けない視点が絶対にあります。大人の意見を聞くことももちろん大切ですが、それが正しいことだとそのまま受け入れずに、自分たちが思っていること・感じていることをそのまま出してください。あと忘れないでいただきたいのが、全員にチャンスがあるということです。この半年間でどこまで成長できるかで皆さんの未来が変わってくるはずです。
沙魚川:5年後10年後の未来をつくるのは若い人たちの価値観です。2025年現在の当たり前になっている価値観はコロナ時代の若者の考え方がベースになっています。ですので、自分たちの視点で世の中を変えていくんだという気持ちを忘れないでほしいです。今の感覚を研ぎ澄まして、新しい社会をイメージしてみてください。
