ロングセラー商品はどのように生まれるものなのか?多くの人に愛される商品が持つ本質的な価値とは?2016年以来、キャリア甲子園で答えのない問いに挑戦する高校生をサポートしている大塚製薬のカロリーメイト。商品名を知らない人はいないだろう。しかし、そのカロリーメイトがどんな想いで生まれたのかを知っているだろうか?そして、発売開始当初、思うように支持されなかったという話を知っているだろうか?キャリア甲子園2021のテーマ「Re:Creation」。本質的な価値をどのように定め、そこから展開していくのか。そのヒントになる物語を、カロリーメイトのマーケティング担当の岩﨑さんにお話を聞いてきた。キャリア甲子園2021に挑戦する高校生の皆さんにも、きっとヒントになるはずだ。

お話を伺った方

大塚製薬株式会社 ニュートラシューティカルズ事業部 製品部 カロリーメイト プロダクトマーケティングマネージャー 岩﨑央弥さん
神奈川県出身。小学生の頃から走るのが好きで、スポーツに打ち込む。高校・大学もスポーツを続け、陸上一筋な青春時代を送る。後にオリンピックメダリストになる陸上選手が大塚製薬の製品を愛用しているのを見て大塚製薬に興味を持ち入社。入社後は佐賀県や福岡県で営業の仕事を経験し、その後東京に異動。現在はカロリーメイトのマーケティングを担当。

「新しい朝食を作る」カロリーメイト誕生秘話


ーカロリーメイトは誰もが知る人気商品だと思いますが、どのような背景で誕生した商品なのでしょうか。

カロリーメイトは1983年にブロックタイプとリキッドタイプの2つが誕生しました。実はそれぞれのルーツは異なります。いつの時代でも社会変化とともに食事や栄養の課題が生じるものですが、当時の開発者は後に社会問題となる「朝食欠食」の兆候にいち早く気づいていました。朝食は、起床後の体と頭をスムーズに目覚めさせる、非常に大切な役割を担う食事で、栄養バランスが整っていることも重要です。そこで五大栄養素をバランスよく含み、いつでも、どこでも誰にでも食べられる“新しい朝食”を作ろうとカロリーメイトのブロックタイプの開発が始まったのです。

ー「新しい朝食を作れ」、まるでキャリア甲子園のテーマのようです。

一方、カロリーメイトのリキッドタイプは異なるルーツで誕生しました。
開発の原点は、医療用の「濃厚流動食」にあります。
入院患者さんのなかには通常の食事がとれず、点滴のみの栄養補給を余儀なくされる方もいらっしゃいますが、人は口から食べ物を摂ることで体内の機能や早く治そうという意欲が高まり、退院や社会復帰も早まります。そのため点滴ではなく、経口で十分な栄養が摂れるものについて研究・検討を重ね、カロリーメイトの前身である濃厚流動食「ハイネックス-R」が開発されました。 
当時の日本はインスタント食品の増加や食の欧米化が進み、栄養面の課題が増加する傾向にありました。そこで、医療現場で実績のあるハイネックス-Rの栄養を、一般の方にも手軽に摂っていただけるように開発したのが、「カロリーメイト リキッド」です。

ールーツも理由も違うというのは驚きました。しかしルーツも形状も全く違う製品なのに、どうして同じカロリーメイトというブランド名称にしたのでしょうか?

形やルーツが違っていても、大塚製薬として大切にしたい思いは一つでした。その思いとは「身体に必要な五大栄養素が手軽に補給できるバランス栄養食」。私たち人間が生きていく上で、バランスの良い栄養はとても大切です。栄養素は人の体のなかでチームプレイで働きます。車で例えるなら糖質・脂質はガソリン、タンパク質はボディ、ビタミン・ミネラルは潤滑油、どれか一つでもないと車は動きませんよね。人の体も同じなのです。

ー時代が変わることでバランスの良い栄養を取ることが難しくなったのがカロリーメイト誕生のきっかけ、ということですね。

そうですね、3度の食事とバランスの良い食事が大切。それができない方やタイミングがあるから、カロリーメイトが存在する。カロリーメイトをより多くの生活者に手に取っていただくことが私の使命ではありますが、食事や栄養バランスの大切さをいつの時代も発信し続けることはカロリーメイトだからできることだと思っています。

発売当初は売れなかった!カロリーメイト、10年に渡る挑戦


ー今まであまり意識せず食べていましたが、そんな想いがあるとは知りませんでした。しかし38年間売れ続けている商品ということは、それだけ本質的な社会ニーズを捉えていたんでしょうね。

それが実はカロリーメイトは発売当初は生活者になかなか受け入れていただけず苦労しました。栄養調整食品というカテゴリー自体カロリーメイトが初めて取得した名称ですので、皆様になかなかご理解いただけず、お菓子とジュースと比較して何が違うのか、浸透するまでに時間を要しました。

ーお菓子やジュースと比較するものじゃない、と今では思いますが、それだけ新しい概念だったということですね。想いが強い分、ショックだったのではないでしょうか。

いえ、弊社の人気商品であるポカリスエットも皆様から支持を得るまでには時間がかかりました。だからカロリーメイトも最初に苦労があっても諦めることはありませんでした。「栄養調整食品」という新しい概念をご理解いただくためには中長期的にじっくり取り組むしかない。そこで私たちはカロリーメイトを「頭で食べてもらう食品」つまりバランス栄養というコンセプトを理解して食べていただく食品と位置づけました。カロリーメイト専門の販促部隊を全国に200名配置して、カロリーメイトとは何か、バランス栄養とは何か、ということを全国各所にお伝えしてまわりました。

ー200人の部隊・・・!それはすごい覚悟ですね。

優れたパフォーマンスを出すためにはバランスのとれた栄養が必要、ということを自社の臨床運動栄養研究所の研究成果や科学的根拠に基づくデータとともに地道にお伝えしました。究極、人が生きていく上で必要なのは水分と栄養です。栄養は必ず人に必要なものですから、理解さえしてもらえれば手に取っていただける、という強い信念を持ち続けました。絶対に諦めない、理解されるまでやり続けよう、と。これは私たち大塚製薬の伝統的なDNAかもしれません。私も営業時代に小売店様によく「大塚さんは諦めないもんね。やると言ったらやるんでしょ」と言われていたものです。実際、カロリーメイトが花開くまでに10年かかりました。

ー10年・・・!花開いたきっかけはなんだったのでしょうか?

自分たちの信念をお伝えし続けた、結果だと思います。カロリーメイトはバランス栄養の重要性をエビデンスを持って伝え続けているのですが、それが自然とお客様の間で浸透していったのです。当初、カロリーメイトはアスリートに支持されていました。カロリーメイト登場以前は、試合の前にトンカツを食べるなどの験担ぎのような食事習慣でしたが、優れたパフォーマンスを出すためにはバランスの取れた栄養が必要。トップアスリートが使い始め、周りの医師やコーチから他のアスリート、一般生活者にも広がっていきました。

苦戦を通じて改めて気づいた、カロリーメイトの本質的な価値


ーまさに続けていたからこそ生まれたブランドイメージですね。そこから人気が続いて38年間も売れ続けているのはすごいと思います。

でも実は、途中で苦戦を強いられた時期がありました。カロリーメイトには手軽さという利便性とバランス栄養という二つの強みがあります。ある時期、手軽さや利便性をメインにアピールし多忙な現代人に向けて忙しい時でも食べられます、というメッセージでプロモーションを展開していました。でも、手軽な食品であればそれは他社もできますよね。カロリーメイトじゃなくてもいい。お伝えするメッセージがブレてしまい、競合との差別化が希薄になってしまいました。

ー確かに忙しい時でも手軽に食べれる、という食品は多いですね。でもそれはカロリーメイト独自の価値ではない、ということですね。

はい、そこで原点に戻ろう、ということで「バランス栄養」というコンセプトに改めて立ち返りました。それこそがカロリーメイトの本質的な価値。カロリーメイトにしかできないことは何か、という問いに立ち返ったのです。2013年のことです。

ー食べるシチュエーションは時代によって変わっても、「バランス栄養」という価値は時代が変わっても変わらない、と。

食べるシチュエーションという意味では2020年のコロナ禍でも大きく変化しました。カロリーメイトは朝の7時から9時が一番売れていたのですが、コロナでリモートワークが増えた結果その時間帯での販売数が落ち込みました。

ー確かに・・・。そればかりはどうしようもないですよね。

朝のシーンが減少するならどこのシーンで買っていただけるのか?という議論も社内でありました。それこそオンラインミーティング中でも食べられますよ、という訴求の仕方もあったでしょう。でも以前の失敗があったので、私たちは原点に立ち返って「バランス栄養」を伝え続けるという選択をしました。結果、2020年の10月頃から回復していきました。当時何が起こっていたかというと、外食産業の営業時間が短縮され、食事に困る、栄養に困る、という人も増えたのです。でもそのときにカロリーメイトがあった。カロリーメイトで栄養を摂ろう、とお客様が思ってくれた。これは「カロリーメイト=バランス栄養」というイメージが伝わっていたからこそ起こった現象だと思います。

過去を振り返り、前へ進む。Re:creationに挑戦する高校生へ


ー上辺の見せ方ではなく、商品そのものが持つ想い、価値を見つめ直した結果ということですね。今年のキャリア甲子園に挑戦する高校生にアドバイスはありますか?

以前、私の先輩がこのようなことをおっしゃっていました。「私たちの仕事はボードを漕いでいるようなもの。ボードを漕ぐときは後ろを見ていますがボート自体は前に進む」。つまり、ちゃんと過去を振り返りながら前に進んでいく、まさに今年のキャリア甲子園2021の大会テーマです。各企業の培ってきた価値をしっかり考えて、その上で新しいものに昇華させて欲しいですね。

ー本質的な価値を見極めるのは難しいことだとも思うのですが、どうすればいいのでしょう?

インターネットなどで調べた情報だけではなくて自分の目で、耳で、体で体験することです。私たちも売上が落ち込んでいた時に実際のお客様の生の声で気づかされた事があります。リキッドタイプのカロリーメイトがすごく売れているコンビニエンスストアがありました。なぜそんなに売れるんだろう、とその店舗に張り込んで、ずっと飲み続けてくれているお客様に声をかけて話を聞かせていただいたのです。なぜ、そんなに買い続けてくれるのか、と。するとそのお客様は「リキッドタイプはカロリーメイトの栄養が体に染み渡る体感があって、栄養を摂れたという実感がある。だから今頑張れるだけでなく、安心感もあるんです。」という話を聞かせてくれました。

ー染み渡る体感、ですか。

そう、私も最初「染み渡る体感ってなんだろう?」と思いました。でもその視点で製品を改めて見直してみたんです。リキッドタイプは先ほどもお知らせしましたが濃厚流動食が起源。病気や怪我で通常の食事を取ることが難しい方でもバランスの取れた栄養を補給する事ができるのです。そのお客様の「栄養が染み渡る体感がある」という言葉は、まさにカロリーメイトの出発点を表していただいた一言でした。ぜひこの視点で製品を手に取って見てみてください。また違った発見があるのではないかと思います。このように、見る方向や角度を変えると物事の見え方は変わっていきます。皆さんも、キャリア甲子園の企業テーマを色々な角度から見てみてください。

ー自分の目で見て触って確かめることが大切ですね。

カロリーメイトはキャリア甲子園に出場する高校生をこれまでもサポートさせていただきました。今年も精一杯応援しています。ぜひ頑張ってください!

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