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昨年度大会では見事優勝チームを輩出したDynabook。私たちの生活になくてはならないノートPCだが、Dynabookはマイナビキャリア甲子園の大会テーマでもある「冒険者」としての歴史を持っていることはご存じだろうか。
世界初のノートPCの誕生秘話や、今年のテーマでキーワードになっているAIについて担当者に話を聞いてきた。ワクワクしながらアイデアを考える参考にして欲しい。(取材執筆:羽田啓一郎)
お話を伺った方
荻野 孝広さん
静岡県出身。大学ではマーケティングを専攻。学生時代はまだPCの黎明期で一部の人しか使っていなかったが、大学の新歓がきっかけでPCサークルに加入。なんとなく入ったサークルだったが、学園祭でPCメーカーに協賛依頼の交渉をしにいく経験や、仲間との活動を通じて人と人の繋がりやコミュニケーションスキルを得ることができ、それを活かせる仕事に就きたいと思った。現在はDynabook株式会社でマーケティングを担当。
世界初のノートPC、dynabook誕生の経緯
ー今年もよろしくお願いします。昨年の大会では見事Dynabook代表チームが優勝しました。
荻野:こちらこそ今年もよろしくお願いします。昨年、初めてマイナビキャリア甲子園に参加させていただきましたが、大会全体を通して、高校生のパワーがすごいなと素直に思いました。正直、想像以上でしたね。その中で当社の代表チーム、秘密結社TONOTOKERAIが見事優勝を果たしました。実はプレゼン動画審査時点では彼女たちはずば抜けて高い評価だったわけではありませんでしたが、その後の準決勝大会では圧倒的な高評価を得られるレベルまで進化してきました。更にその後の決勝大会でも見せ方をかなり変えてきて、表現力はもちろんのこと、Dynabook以外の第三者が審査員となることを踏まえたプレゼン内容になっていて脱帽しましたね。
ーそこまで進化したプレゼンになった秘密は何だったのでしょうか?
荻野:ただのひらめきで終わらずに、しっかりと情報の裏どりをしていたところでしょう。彼女たちは実に幅広い人たちにインタビュー取材をしていました。さまざまな人から聞いた話を元にアイデアを進化させ、プレゼンの見せ方にも組み込んできた。勝ち上がる度に進化を続けてきた理由はそこにあるんじゃないかなと思います。
ー秘密結社TONOTOKERAIのお二人をDynabookのWebCMにも起用されたようですね。
荻野:最初からマイナビキャリア甲子園の高校生をCMに起用しようと思っていたわけではありませんが、彼女たちのパワーを感じてこちらからお願いしました。私たちのPCは若い方々の夢の実現を応援するPCですし、若い人たちにdynabookを知っていただける機会としてはピッタリだったと感じていたからです。
ーありがとうございます。では今年初めてマイナビキャリア甲子園に参加される方も多いと思うので、改めてdynabookがどういうPCなのかご説明いただいてもいいでしょうか。
荻野:私たちDynabook株式会社は、世界で一番最初にノート型PCを作ったメーカーです。それまではデスクトップ型のPCが世界中で使われていました。PCを使いたい時は、人間がPCのところまで移動して使う、というのがあたり前だったのです。ある意味、PCが中心の時代だったんですよね。しかし、使いたい時に使いたい場所でPCを使えるようにしよう、ということで1989年に世界で初めて誕生したノート型PCが「dynabook」です。バッテリーを搭載し持ち運ぶことができて、いつでもどこでも使いたい場所で使える。まさにここから人間中心のPC時代が始まったと言えるでしょう。
ーテーマの中に「冒険者」とありますが、まさに「dynabook」は未開の地を開拓するような冒険者だったんですね。
荻野:そうですね、今年の大会テーマを聞いてまさに、と思いました。dynabookというブランドは今年35周年なのですが、35年経った現代では、今流通しているコンシューマPCの約90%はノート型PCです。dynabookは冒険者として開拓をしながら、人々をよりよい未来に導いてきました。もともとdynabookは、アメリカのマサチューセッツ工科大学で計算機の研究をしていたアラン・ケイという人物の論文が発端となっています。当時、PCはまだ一部の技術者しか使わないものでした。しかし教育者でもあったアランが1972年に「人間が読み書きの能力を身につけるように、知識の伝達手段としてPCは重要になる」として”ダイナブック”ビジョンを掲げました。そのビジョンでは、子どもが手軽にPCを扱い、自分が調べたいものを調べたり、表現したいことを表現する、そんな夢のデバイスのイメージが語られていました。そのダイナブックビジョンに共感し、我々がダイナブックの名前を冠したノート型PCを開発したのです。一部の人だけではなく、あらゆる人が使えるのがダイナブックビジョンということもあり価格も19万8千円と設定しました。当時、デスクトップPCは30万円程していたので、価格もセンセーショナルでした。
ーなるほど、そうしたビジョンがあったからこそ、未開の世界で新しいものを作れるんですね。
荻野:ビジョンを実現する技術も必要です。ダイナブックビジョンを実現させるためには、安全安心が絶対に譲れないポイントでもあります。どんなに高性能で薄くて軽くても、熱が溜まってしまうマシンでは安心して使えません。時代背景が変わっても、安心安全は守る。これはDynabookのこだわりであり決して変えない部分です。ただ単に処理が早かったり、デザインがかっこいいだけのPCだったらDynabookはやりません。
人々が自然に使えるAI
ーありがとうございます。dynabookの特徴はよくわかりました。では今年のテーマのお話を伺っていきたいのですが、今回、テーマの中に「AI」という言葉が入っています。
荻野:昨年の私たちの代表チーム、秘密結社TONOTOKERAIもAIをアイデアの基軸に置いていましたが、これからの社会でAIの存在はますます大きくなってくるでしょう。ただ重要なことは、AIを無意識のうちに使えるようにする、ということです。AIを使おうと思って使うのではなく、ユーザが無意識のうちに自然と使い、日常的になることが大切です。
ー例えばどんな事例があげられるのでしょう?
荻野:dynabookの例でいうと、例えばAIによるノイズキャンセラー機能ですね。オンライン会議は今、世界中で行われていますよね。その時、dynabookはAIが人の声と雑音を識別し、人の声だけを拾うのです。これにより、より聞き取りやすいコミュニケーションが可能となります。ユーザの日常生活の中に自然と溶け込んでいる例ですが、これは動画を見ていただくのがわかりやすいと思うのでぜひこちらをご覧ください。
ーこれはすごいですね。他にも、生成型AIなど、AI自体の進化もすさまじいですよね。他にAIに関するトピックスはありますか?
荻野:最近ですとエッジAIという流れがあります。AIの多くはクラウドに搭載され、私たちはネットワークを通してAIにアクセスしています。エッジAIとはクラウドではなく、端末自体に搭載されているAIのことを言います。ネットワークを通さないので高速ですし、セキュリティも安全です。また、ローカルデータから生成されるデータを元に学習するのでよりパーソナルな判断をAIがしてくれるようになります。ただ、これが実現するためにはより高いパフォーマンスが発揮できるマシンである必要があります。そこでdynabookには、「dynabookエンパワーテクノロジー」を適用させており、同じCPUを搭載した他社のPCと比べても、安定的に早くAI処理ができるというメリットがあります。AI機能が快適に利用できるdynabookシリーズをぜひチェックしてみてください。
Dynabookのテーマに取り組む上でのヒント
ー今回、Dynabookのテーマに挑戦する高校生にヒントをいただきたいと思います。テーマの中にも「人類」とありますが、これは日本だけにこだわるのではなく、グローバルを視野に入れた提案が望ましいということでしょうか。
荻野:そうですね、日本国内だけではなくて地球規模でみんながいいなと思ってくれるものがいいですね。Dynabook自体がグローバルブランドですし、今年のテーマにも入れているAIは言語の壁をなくす概念でもあります。既に翻訳アプリなどは世の中にも普及していますし、皆さんもグローバルに発信できるアイデアの方が考えやすいのではないかなと思います。
ー端末自体も進化していきそうですよね。
荻野:そうですね、Dynabookの親会社でもあるシャープが、先日SHARP Tech-Dayという技術展示イベントを開催したのですが、そこでDynabookはメガネ型のXRデバイスの提案を行いました。これは見た目は普通の形のメガネなのですが、AIとマイクが搭載されていて、目の前の人と会話している内容の翻訳をグラスの中で表示してくれるものです。またメガネを通して見たチラシなどの情報を要約してグラス上に表示してくれたり、会話中に次の話題を提案してくれるような機能も搭載されています。
ーそんなすごい端末が開発されているのですね・・・!実用化されるのが楽しみです。
荻野:昨年の秘密結社TONOTOKERAIも、AIと保険という斬新なアイデアを考えてくれました。私たちではそんな発想は思いつきません。今年もマイナビキャリア甲子園に挑戦する高校生の皆さんから、あっと驚くようなアイデアを期待したいですね。