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第11回大会、初めてマイナビキャリア甲子園に参加するファミリーマート。知らない人や使ったことがない人はほとんどいないのではないかと思うほど我々にとって身近な企業だ。しかし、消費者として知っていても「コンビニエンスストア」というビジネス視点で見てみると実は知らないことがたくさんある。この記事を読めば、ファミリーマートのテーマに取り組むにあたって参考になるのはもちろん、普段接点のあるサービスをビジネス視点で見るきっかけになるはずだ。(取材執筆:羽田啓一郎)
お話を伺った方
土濃塚 友李さん
高校時代はソフトボールに精を出し、大学入学後もソフトボールに打ち込む。経済学部経営法学科に入学。最初は教員を目指していたが、スーパーバイザーという仕事に興味を持つ中でコンビニエンスストア業界を志望するようになり、ファミリーマートに就職。スーパーバイザーの仕事をした後、現在はCSRやダイバーシティを推進する仕事をしている。
田島 紫雲さん
もともと生物や昆虫が好きだったが、中学2年の時にバイオサイエンス関連のニュースを見て憧れ、応用生物化学について勉強できる大学を選択。大学院まで進学した後、研究活動はやり切ったと感じ、就職活動は別の道を考える。いろいろな商品に関わることができるコンビニエンスストア業界に興味を持ち、ファミリーマートに就職した。スーパーバイザーを経験した後、現在はデジタル事業を推進する仕事を担当。
私たちの知らない“コンビニエンスストア ”
ー今日はよろしくお願いします。コンビニエンスストア(以下コンビニ)は私たち生活者にとっても身近な存在ですが、ビジネスという立場からだと知らないことがたくさんあると思っています。お二人とも“スーパーバイザー ”という仕事からキャリアをスタートされていますが、スーパーバイザーは何をする仕事なんですか?
田島:こちらこそよろしくお願いします。スーパーバイザーの前にまず「フランチャイズシステム」のご説明をした方が分かりやすいかと思います。ファミリーマートは日本全国に約1万6千店舗を展開していますが、それらのほとんどは私たちファミリーマートが直接運営しているわけではなく、オーナー様に加盟していただき、経営をお願いしています。その代わり私たちファミリーマート本部が商品やブランド、経営ノウハウをご提供しているのです。このようなビジネスの仕組みを「フランチャイズシステム」と言います。
ーそうなんですね。てっきりファミリーマートの社員の方が店長などを担っているのかと思っていました・・・。
土濃塚:私たち社員は主に先ほど出てきた“スーパーバイザー”として、オーナー様である加盟店の皆様の経営をサポートしています。スーパーバイザーは担当しているエリアの加盟店がもっと収益が上がるようコンサルティングをしているのです。私たちファミリーマートはさまざまなノウハウやデータを持っているので、加盟店の皆様に情報提供しながら一緒に店舗や地域を盛り上げていくパートナーとして働いています。「フランチャイズシステム」と「スーパーバイザー」、この二つがファミリーマートのビジネスを根幹から支えている仕組みです。
ーそこはちゃんと押さえていないと今回のテーマも難しそうですね。テーマの中に「地域社会」という言葉が出ていますが、スーパーバイザーもそのエリアの加盟店の皆様と一緒に地域を盛り上げているんですね。
田島:そうですね、私たちファミリーマートは創業まもない頃から「あなたと、コンビに、ファミリーマート」というコーポレートメッセージを使っていますが、加盟店はもちろん、その土地の皆様にとってなくてはならない存在になりたいと考えています。
土濃塚:コンビニというとあらゆる商品が売っているお店、というイメージがあると思いますが、それだけではありません。各種料金の支払いや住民票受け取りなどの公共サービスも今はコンビニでできるようになっています。またアルバイトスタッフなど雇用の提供をしているという側面もあります。
ファミリーマートのテーマ設定の背景
ー地域社会にとってインフラとも言える存在になっているということですね。ではそんなファミリーマートがなぜ今回のテーマを設定したのかを教えてください。
土濃塚:先ほどお話した通り、私たちは「あなたと、コンビに、ファミリーマート」を掲げ、その先の「なくてはならない存在」になりたいと考えています。しかし社会環境が大きく変わる中、地域が抱える課題も変化してきています。そうした環境下で、ファミリーマートとして地域に何ができるのか。それをぜひ高校生の皆さんに考えていただきたいのです。
田島:また、テーマの中に「デジタル」という言葉を入れていますが、ファミリーマートはデジタルによるサービスの向上に積極的に取り組んでいます。事例として二つご紹介させていただくと、一つはファミリーマートビジョン、二つ目はファミペイです。ファミリーマートビジョンとは店舗内に設置されている大型のビジョンのことで、ここにはファミリーマートの新製品などの案内だけでなく、企業様の広告などをご出稿いただく新しいビジネスになっています。ゆくゆくはこのファミリーマートビジョンに地域のお祭りなどその地域ならではの情報も流していきたいんです。地域のコミュニティが小さくなり、回覧板も減っている中、ファミリーマートが地域の情報のハブになればいいなと。
ーファミリーマートビジョンは私も見たことあります。レジを待つ間などつい目がいってしまいますよね。あそこに地域の情報が流れるのは面白いですね。
田島:ありがとうございます。今、マーケティングの世界は大勢に同じ情報を届けるマスマーケティングよりも、その人その人に合う情報を届けていくone to oneマーケティングが注目されています。そこで我々が最も力を入れているものの一つがファミペイというスマートフォンの決済アプリです。他社様もアプリは展開されていますが、独自の決済システムを搭載しているのは2024年9月時点ではファミペイだけです。ファミペイを通して購入いただいたデータを元に、お客様に合わせたクーポンを配信したり新商品のご案内をお届けしていくような展開を考えています。
ー地域によってお客様の層も求めている情報も変わってきますものね。そこをデジタルで最適化された情報をお届けしていく、と。他に地域社会に対して行なっていることはありますか?
土濃塚:さまざまな取り組みを行っていますが、たとえばファミマこども食堂という取組を行なっています。これはお子さまたちが地域のファミリーマートの店舗で食事をしながら交流ができるというものです。他にも地域にお住まいの障がいのある方のアート作品を店舗に展示する、ファミマギャラリーというプロジェクトもあります。障がいや福祉の理解を進めることが目的ですね。海が近いエリアの店舗では海沿いの清掃活動を店舗が主体となって行なっていたりします。
ファミリーマートのテーマに取り組む上でのヒント
ーありがとうございます。コンビニエンスストアという地域に根ざした物理的な店舗があることでできることはたくさんありそうですね。高校生がファミリーマートのテーマに取り組む上で注意してほしいことはありますか?
田島:基本的には自由に発想いただいて良いのですが、私たちのビジネスはフランチャイズシステムで繋がっている加盟店の皆様のおかげで成り立っている、ということは念頭に置いていただきたいですね。仮に、ファミリーマートにとって莫大な利益が上がるビジネスアイデアだったとしても、加盟店の皆様への負担がものすごくかかってしまうようなものだと評価はできないということです。私たちファミリーマートだけでなく、加盟店をはじめとしたステークホルダーの皆様にもちゃんと利益貢献できるようなアイデアを考えてもらえると嬉しいです。
土濃塚:私たちは「チャレンジするほうのコンビニ」と認識しています。それくらい新たなことに挑戦しよう、というマインドを持っています。おもしろい!こんなことやってるんだ、と多くの方に思ってもらえるような取り組みを行っていくのがファミリーマートです。だから高校生の皆さんも自由に考えてみて欲しいですね。
ーありがとうございます。では最後に、高校生へメッセージをお願いできますか?
田島:私個人のメッセージになりますが、私は自分の高校時代を振り返るともっといろいろな経験を積むべきだったなと思っているんです。高校時代の出来事って、一つ一つの出来事やシーンも何年経っても鮮明に覚えています。マイナビキャリア甲子園に出場される高校生の皆さんは、実は人生経験として深く刻まれる時期を過ごされているんですよ。だからこそたくさんのことに挑戦してほしいと思います。
土濃塚:社会人になると、どうしても視野が狭くなったり、発想があっても実際に形にできないことがあります。だから高校生の皆さんは、前例や慣習など気にせず、何もないまっさらな状態でファミリーマートに提案して欲しいです。皆さんが普段の生活で感じたことや気づいたことは、発信しないと周りに気づかれません。今回の機会を活かして、チャレンジすることを楽しんでもらいながら提案して欲しいですね。