生命保険協会は、生命保険会社の業界団体だ。国内にあるすべての生命保険会社が加入していることもあり、生命保険の普及や顧客との相談窓口の運営、政府・行政との折衝など、業界に共通する課題に取り組んでいる。そんな生命保険協会で日頃から国民の安心を守っている瀧田さんと月野さんに、今回のテーマを出題するに至った経緯を伺った。

お話を伺った方

生命保険協会 企画部企画グループ 副調査役 瀧田 祐さん

ニューヨーク州立大学を卒業後、2008年に生命保険協会に入会。入会以来、業界の代表として様々な取組みに従事。ベルギー・ブリュッセルに本拠地を置く国際保険協会連盟への出向を経て、現在では企画部に所属し、金融庁との折衝や他業界との調整窓口、保険教育の推進など幅広い業務に携わる。またSDGsや高齢社会など、生命保険業界と親和性の高い課題に積極的に取り組んでいる。

生命保険協会 企画部 総合調整担当部長 月野 辰郎さん

東京大学を卒業後、2006年に大手生命保険会社に入社。人材交流の一環として2020年4月から現職。生命保険会社では個人保険の営業や、内勤職員・営業職員の人事運用等に携わる。生命保険協会では金融庁や生命保険会社各社等、協会内外におけるパイプ役を務め、各種意見の調整を行っている。

生命保険の使命は、安心を提供すること

ーまずは、生命保険とはどのようなものなのか教えてください。

瀧田さん:私たちは日々、さまざまなアクシデントと隣り合わせの世界を生きています。保険は、そうしたトラブルによる不安に備えるための仕組みです。なかでも生命保険は、病気や怪我、死亡など「人」に関わる損失を保障しています。一人ひとりが保険料を積み上げて多くの人とリスクをシェアし、自分や家族の生活が経済的に困難になったときにまとまったお金を受け取れるという相互扶助の仕組みで成り立っています。
瀧田さん
月野さん:生命保険業界はこれまでも、世界大戦や震災、豪雨などの大規模災害において国民生活の向上を支え、一貫して安心を提供してきました。また現在は新型コロナウイルスの感染拡大予防に最大限努めながら、お客さまから寄せられる声を真摯に受け止め、世の中に寄り添った生命保険のあり方を模索しています。

ーどんなときも、国民の安心を守ってきたのですね。

瀧田さん:はい。生命保険業界の使命は、お客さまに安心を提供することです。社会の変化に応じるだけでなく多様化するニーズを的確に捉え、発展する技術も活用することで、お客さま一人ひとりにあった商品・サービスの提供に取り組んできました。

不安を安心に変える

ーでは、ここから、テーマについて聞かせてください。まず「生命保険会社の強み」とは、どのようなものでしょうか。

瀧田さん:生命保険会社には、大きく分けて3つの強みがあります。たとえば現在国内には42の生命保険会社が存在し、全体で23万名を超える営業職員がいますし、営業拠点という全国のネットワークがあります。また医療業界や代理店という他業界とのつながりもあります。

さらに、生命保険会社は年間で約19兆円の保険金等をお支払いしています。その資産規模は国の社会保障給付金の約5分の1。社会保障の一役を担う社会基盤として投資や運用を行い、資産拡大にも務めています。

最後に、国民の健康情報などのビッグデータです。現在、生命保険には、人口の8割が加入していると言われています。こうしたデータの蓄積を活用することで、国民生活のさらなる向上に貢献することができるでしょう。

月野さん:もちろん、これらはほんの一部です。上記にとらわれる必要はありませんので、皆さんなりに調べてみてください。また今回は生命保険協会として出題していますが、生命保険会社が提供するサービスとして考えていただいて構いません。
月野さん
ーネットワーク、資産規模、ビッグデータ…。ほかにもありそうですね。次に「人生100年時代」に込められた思いについて聞かせてください。

瀧田さん:はい。皆さんもご存知の通り「人生100年時代」とは、多くの人が100年生きることが当たり前になる時代のことです。人々がより長生きできる環境になるのですから、このこと自体は非常に良い傾向なのですが、一方で、これまでには想定もしていなかったことが起こると考えられます。たとえば老後の生活資金不足、平均寿命と健康寿命のギャップ、 高齢化の進展とともに生じる認知症の方の増加など、人々の不安やニーズも変化することが想定されます。

超長寿社会においてもお客さまの人生に寄り添うこと、そして契約をご継続いただける環境を整備していくことは、生命保険業界にとって極めて重要な課題と認識しています。 私たちの使命である「安心を提供する」という役割の必要性は、さらに高まる可能性があると考えています。

ー「人生100年時代」には、たくさんの不安がありそうですね。

月野さん:仮に100歳まで生きるとすれば、 ご参加いただく学生の皆さんはあと80年近く生きていくことになります。ぜひ、このテーマを検討する際には、ご自身の未来に起こりうる社会課題を想像しながら、どのような国民の不安があるのか考えてみてください。そしてその不安を安心に変えるために、生命保険会社の持つ強みを活用してみてください。

新しさと社会的意義の両方を考えよう

瀧田さん
ーとはいえ、高校生の皆さんにとって、新しいサービスを作り出すことは簡単なことではないと思います。どのように取り組むと良いでしょうか?

瀧田さん:まずは、子育てをしている親世代や身内のお年寄りなど身の回りの方々に、何が困っているのかを聞いてみることをおすすめします。そこには、世の中が抱える不安が必ずあるはずですから。

また、世の中にどのようなサービスがあるか、調べてみるのも良いでしょう。すぐに新しいアイデアは出てこないものです。既存のサービスを参考にしながら、世の中にはないアイデアを作ってみてください。

ーアイデアを作り上げる上では、チームワークも大切だと思います。

月野さん:そうですね。チームで取り組むからこそ、1人では考え付かないアイデアが出てくるはずです。意見を言い合うことで新しい切り口を見つけたり、落とし所を見つけたり。ぜひ失敗を恐れず、後悔のないよう議論を尽くしてほしいです。

私たちもそうですが、1人でやる仕事はほとんどありません。例えば新商品を作ろうとするときには、システム開発や事務・支払い部門、医師など多くの関係者と連携して取り組みます。もちろん、最初から上手くはいきません。もちろん、最初から上手くはいきません。トライアンドエラーを繰り返しながら、チームで取り組むことを経験してほしいです。

ーなるほど。では、今回のテーマに取り組む上で気をつけるべきことはありますか?

月野さん:はい。生命保険会社の提供するサービスは、お客さまから預かった保険料を使って提供しています。そのため、あまりに突飛すぎると「お金の無駄じゃないの?」と思われてしまい、信頼を失いかねません。社会やお客さまに還元するものであることを前提に、最終的にはそのアイデアで「どのような安心を提供することができるか」を考えてみてください。

瀧田さん:とはいえ、一番大切したいのは皆さんの画期的なアイデアです。昨年は斬新なアイデアが集まり、大変刺激を受けました。皆さんのアイデアと熱量を前にして、我々も負けてはいられない、生命保険業界のさらなる発展に貢献していきたいと、気が引き締まりました。公共性の高い事業ではありますが、リスクばかりを気にせず、高校生ならではの切り口に期待しています。

ビジネスの世界に、正解はない

星野さん
ー生命保険業界は今後、どのような取り組みに力を入れていくのでしょうか。

月野さん:まずは、新型コロナウイルスの各種対応の高度化を図っていきます。従業員の感染予防はもちろん、業界における取組みの情報共有を積極的に進め、適切な業務継続に取り組んでいきます。このような時代にあっても、お客さまに変わらぬ安心をお届けしていきます。

瀧田さん:多様化するリスクや時代の要請に応じ、お客さまの健康増進に役立つ取組みや若者向けの保険教育の推進、地球環境に配慮した資産運用などにも取り組んでいきます。私たちに求められる社会的役割を、しっかりと果たしていきたいですね。

ー最後に、参加する高校生の皆さんへメッセージをお願いします。

瀧田さん:皆さんにはこれから、人生という長い道のりが待っています。そして、たくさんの不安に悩まされるでしょう。だからこそ高校生という早い時期から将来の備えについて考えることが大切だと、私たちは考えています。

とはいえ、なかなかそういう機会にめぐり合うことも少ないでしょう。今回のチャレンジを通して生命保険を身近に感じたり、将来の備えについて考えるきっかけになったりすれば、これ以上のことはありません。また生命保険会社の社会的意義の大きさや事業領域の広さも感じていただけたらと思っています。

月野さん:ビジネスの世界に、揺るぎない答えは存在しません。あるときは正解だと思ったことが、 1週間後には不正解になっていることもあります。 しかし、課題を見つけて限られた時間の中で自分なりの解決策を準備し、仲間と議論しながら答えに近づいていくというプロセスは、どこかで必ず求められます。決して簡単なことではありませんが、答えのない課題に、ぜひ挑戦してみてください。その経験がきっと、皆さんにとってかけがえのないものになるはずです。
瀧田さんと月野さん

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