キャリア甲子園2020に初参加となる三井住友カードが出題したテーマは「キャッシュレス」。ここ数年、スマートフォンを使ったバーコード決済サービスが派手なキャンペーンを展開するなど、私たちの日常生活でも触れる機会が多い話題なのではないだろうか。ただ一方、諸外国に比べるとキャッシュレス比率はまだ低いとされているのをご存知だろうか。そもそも、キャッシュレスとは何なのか。どんなメリットがあり、そしてこの先の社会はどうなっていくのか。三井住友カードの原さんにインタビューした。

お話を聞いた人

原 央介さん 三井住友カード株式会社 マーケティング統括部

愛媛生まれの大阪育ち。関西学院大学商学部卒業。
商品など何か一つのものに縛られたくない、経済全体の動きを学びたいという思いで金融業界に入った。
営業や法律対応、プロモーションなどの仕事を経験した後、2017年からマーケティングの仕事に従事。プロジェクトマネージャーとして、TVCM作りをはじめ、ユーザーに体験価値を届ける取組を行い、実績を残す。大学生ビジコンの審査員や高校への金融教育の講師など、学生への支援活動にも熱心。

キャッシュレスとは?


ー今回のテーマ出題の背景を教えてください。

デジタルテクノロジーの進化や新しい生活様式の広がりなど、私たちの生活は根本から変化しています。数年先のライフスタイル・価値観を想像し、いち早くその変化の兆しを捉えて実現することが、これからのビジネスでは重要になってくるのです。高校生はデジタルが当たり前の時代を生きています。柔軟で豊かな想像力と発想力に期待し、拡がりのある未来のテーマを設定いたしました。

ー❝キャッシュレス”は最近よく聞く言葉ですが、キャッシュレスを取り巻く環境について教えていただけますか?

キャッシュレスとはつまり現金を使わずに「決済」を行うことですが、この数年で「決済」を取り巻く環境は急激に変化し、私たち消費者のライフスタイルも大きく変化しています。2020年に起こったコロナ禍で特に顕著な変化が①デジタル化の加速、②応援消費や寄付の増加、③SDGsへの興味関心の高まりです。また政府も2025年までにキャッシュレス比率40%を目指す方針を掲げており、今後ますますキャッシュレスは私たちの日常に浸透していくでしょう。

ー政府は何故キャッシュレスを推進しているのでしょうか?

理由はたくさんありますが、大きなメリットは二つです。まずはキャッシュレスにより実現する労働力の効率化です。日本は少子高齢化による労働人口の減少が懸念されています。スーパーや飲食店などでアルバイトをしたことがある方なら分かるかもしれませんが、例えばレジの現金を集計したり、現金を保管する金庫を管理しなければならないなど、現金の扱いには時間と労力が必要です。これは企業活動でも同様で、現金でのやりとりは人が手作業で行うことが多いためミスが起きやすく、そのため注意を払わなければならない事も増えるため、従業員の労働時間が長くなるという原因に繋がります。労働力がこれからどんどん減っていく日本では、キャッシュレスによって実現できる働き方改革の効果が期待されているのです。

ーなるほど、確かに現金でのやりとりが減ればそれだけスムーズになるかもしれませんね。

そしてもう一つの理由は日本の経済を活性化させるためです。日本は観光立国の実現を掲げており、東京五輪、大阪万博といった世界的な一大イベントも控えています。キャッシュレス決済ができる店を増やすことで訪日外国人によるインバウンド消費の拡大が期待できるのです。また、キャッシュレス決済が増えることにより、今まで現金では把握できなかったお金の流れが把握できるようになります。企業はこの決済データを活用し、ビジネスの効率化を進めることができます。
もちろん、消費者にとってもキャッシュレスは安心して利用できる安全・便利な決済方法です。”現金”のやりとりでは実現できなかったあらゆることをスマートに行うことができる、それがキャッシュレスなのです。

日本は何故キャッシュレスが広まらないのか


ーキャッシュレスのメリットはよくわかりました。しかし日本はキャッシュレスがなかなか進まないとも言われています。それは何故なのでしょう?

 

そうなのです、そこは大きな課題です。ここ数年、バーコード決済のサービスが登場してキャッシュレスの普及率も上がったのですが、それでもここ最近は伸び悩んでいますね。

ーバーコード決済は確かに一時流行りましたね。キャッシュバックのキャンペーンのお得感で、あれをきっかけにアプリをインストールした人も多かったと思います。

はい、確かに一定の効果はありました。ただ、結局「お得感」では一時的な利用しか期待できない、ということがわかりました。キャンペーン期間中は利用率も上がるのですが、キャンペーンが終わると使われなくなる。結局、お得感だけを打ち出すのではユーザーは動いてくれないということでしょう。

ー私は完全にスマホ決済ばかりで現金はほとんど使わなくなりましたが、確かにキャンペーンやポイントは全く意識していないかもしれません・・・。

そうなんです。キャッシュレスをご利用いただいているユーザーの皆さんはお得感じゃなくて、その便利さに惹かれて使っているのです。つまりポイント還元はきっかけにはなりますが、シンプルにどうキャッシュレスを習慣化できるか、ということが重要だと考えています。

ー海外ではキャッシュレス普及率がかなり高いと聞きますが、何故日本はキャッシュレスが普及しないのでしょうか?何か技術やサービスの差でしょうか?

いえ、技術面やサービスレベルで日本は決して劣っているわけではありません。日本は現金を使うこともそれなりに快適だから、というのが理由として大きいでしょう。諸外国に比べると治安もよく偽札もほとんど出回っていない。現金でも安心快適にお買い物ができてしまう。手元にいくらあるかを感じておきたい、という情緒的な理由も大きいと考えています。また、多くの人にとってお金はありがたいもの、という文化的な感覚がある。財布の中にあるものを大切に使いなさい、という価値観が根強いのです。

ーキャッシュレスのデメリットってありますか?

全てのお店で使えるわけではない、ということでしょうか。どんなに便利でも、使えるお店が限られていると当然利便性は落ちますからね。だから我々は消費者だけではなく、店舗側にもキャッシュレスのメリットを伝えていく必要があります。

キャリア甲子園に取り組む高校生へ、考え方のヒント


ーそれでは最後に、キャリア甲子園に挑戦する高校生に考え方のヒントをお願いできますか?

2025年にキャッシュレス決済比率40%になったとして、それがどんな姿をした社会なのかを想像してほしいですね。キャッシュレスのメリットデメリットは今回のインタビュー記事でお分かりいただいたと思うので、それらを踏まえると2025年にはどんな生活スタイルになっているのか。先ほどもお話しした通り、40%を達成するためにはお得なキャンペーンではなく「生活に習慣づいている」ことが大切になってきます。だからこそ、私たちの暮らしがどうなっているかをまずは想像してほしいです。

ーただ単に「こんなサービス」ではなく、私たち一般人の日常レベルの意識が変わっているかもしれませんね。

 

そうですね。お金に対する考え方、価値観が変わった社会を創造してほしいです。そこにどんな変化が起こるのか。皆さん自身がこういう世界だったらいいよね、というサービスの軸を考えて欲しいです。政府が言っているから強制的にやる、ではなく消費者もお店もみんなが使いやすく、ポジティブになれるような企画、取り組みを考えてください。

ー高校生に期待していることはなんでしょう?

私は大学生のビジコンの審査員や、高校の出張授業にも取り組んでいるのですが、最近は社会人より若い人の方が社会課題への意識が高まっていますね。そういうことを大切にしてほしいです。自分たちの未来を自分ごととして考えてほしい。大人になって社会に出て組織に属して働き始めると視野が狭くなるんです。日々見ているニュースや起きた出来事の中で、自分が感じたことを未来に生かしてほしいと思います。

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