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第9回大会から、今年で3回目の協賛となるセコム。毎年、ワクワクするキーワードがテーマに込められているが、今年も楽しそうなアイデアが思い浮かびそうなテーマだ。その背景にある想いとは?セコムのテーマに取り組む高校生は必見!(取材執筆:羽田啓一郎)
お話を伺った方
沙魚川(はぜかわ)久史さん
幼い頃から新しいものが好きで、小学生の頃からプログラミングを始める。既存の物事を覚える歴史が苦手で、それよりも新しい物事を作りたい、と考えて理系のモノづくりの道へ。大学院の研究は終わりがなく、研究を続けるうちに四つの大学院を卒業している。日本のGDPの70%はサービス産業なのに工学的には確立されていないところが面白いと思い、サービス産業で研究所を持っているセコムに入社を決めた。現在、セコムのオープンイノベーション活動の代表を務める。
仙石 真帆さん
高校時代はバレーボールに打ち込む青春を送っていた。高校2年生の3月に東日本大震災を経験し、メディアのあり方に関心を持ったことがきっかけで、メディア社会学がある関西の大学に進学。学生時代は飲食店のアルバイトや食べ歩きサークルなどの4つのサークルを掛け持ちし、忙しくも楽しい学生生活を過ごした。就職活動の頃に祖父母の家が火事に遭い「安全・安心」の大切さを目の当たりにしたことで、セコムに入社を決めた。現在、オープンイノベーションチームに所属。
セコムはセキュリティだけの会社じゃない?
ー本日はよろしくお願いします。セコムさんは今年で3回目のテーマ出題となりますが、初めてマイナビキャリア甲子園に取り組む高校生も多いと思いますので、改めてセコムという会社がどういう会社なのか教えていただけますか?
沙魚川:今年もよろしくお願いします。皆さんが聞いたことのあるセコムは警備、セキュリティというイメージかもしれませんが、セキュリティだけをやっている会社ではありません。実はセキュリティ事業の売上はセコムグループ全体の約半分で、防災やメディカルなどさまざまな事業を手掛けています。
仙石:セコムはセキュリティに限らず「『安全・安心』を社会にお届けする会社」です。そしてそのために高度なテクノロジーを駆使しています。セコムは1962年に日本で初めての警備保障会社として創業し、創業時は皆さんが想像している通りの“警備をする会社”でした。当時は警備員が各所を巡回して安全を確認する、ということをしていたのですが、それでは限界がある、と創業4年目にはセンサーとネットワークを活用し始めたのです。
沙魚川:お客様施設に警備員ではなくセンサーを設置することで、センサーが変化を察知し、それをネットワークに乗せて監視センターに集約することに成功しました。これによってより広い範囲に対して正確に、そしてスピーディーに動くことができるようになったのです。
ーこの1年で新しくリリースされたサービスはありますか?
沙魚川 :新しいタイプのドローンをリリースしましたね(https://www.secom.co.jp/corporate/release/2023/nr_20231012.html)。これまでも広い敷地内を自動で巡回して警備を行うドローンを開発して活用していたのですが、ドローンの大きな課題が「バッテリー」で、飛行時間に制約があることでした。電池を大きくすると機体も大きくなってしまいますしね。そこで我々は飛行時間を伸ばすことに加えて自動でバッテリーを交換するドローンを新しく開発したのです。
ー最新の自動ロボット掃除機のようなイメージですか?自分で充電しにステーションまで戻ってくれますよね。
沙魚川:これまでのドローンも自動で充電をしにステーションまで戻っていましたが、今回の新しいドローンはステーションに戻ってバッテリーの交換を自動で行うのです。文字通り、バッテリーカートリッジをガッチャン、と交換します。これによってフル充電までの時間を待たず、バッテリーを交換したらすぐにまた飛行ができるのです。
ーなるほど・・!ドローンが自分でバッテリーを交換するのですね。それはすごいです。
セコムの出題テーマを読み解く
ーそれでは今年のテーマについて教えていただきたいのですが、いくつか気になるキーワードがあります。まず“遊び心”という言葉が入っている意図を教えてください。
仙石:私たちは、ただ単に技術が優れた製品を作りたいわけではなく、ユーザの感情の変化を起こすものを作りたいと日々考えています。どんなに便利な機能も、使った人に感情の変化が起きないと我々は商品化しません。高校生の皆さんにイメージしていただきやすいのは人気漫画、ワンピースとコラボしたAIルフィ(https://www.secom.co.jp/innovation/news/2023/nr_20240216.html)。セコムの「バーチャル警備システム」にワンピースの主人公、ルフィの音声や姿を乗せたもので、その場その場でAIが自律生成した自然な合成音声で会話ができるのです。誰もが知る人気キャラクターの声で対応されるとワクワクしますよね。このようにセコムは遊び心を大切にしたサービス開発を心がけているのです。
沙魚川 :今回、セコムのテーマに取り組む皆さんは今すぐできることに囚われないで考えてみてください。リアル路線の発想より、ちょっと先の未来のイメージを膨らませる発想の方が豊かなものになるはずです。ただ、出発点は等身大の皆さんです。“あなたの日常”とテーマ内で入れているのは、みなさんの原体験をベースにしてほしいからです。自分たちの等身大の日常から、未来を描いてみてください。
仙石:「バーチャル警備システム」の元々のアイデアの発想は、2017年、セコムのイノベーションイベントで、ある女子大生が「恋人はバーチャルでいい」と発言していたことです。「対人コミュニケーションにおいて、今後デジタルの価値が上がってくるのでは?」ということが発想のきっかけの一つになりました。また「SECOM カンタービレ」というApple watchで家の鍵やセキュリティを操作できるサービスがあります(https://www.secom.co.jp/homesecurity/official-app/#newApp)。これはコロナでPCを持ち運ぶ人が増えて、リュックで通勤通学する人が増えたことがきっかけで生まれました。家の鍵やスマホをリュックに入れていると、帰宅した時に玄関の前でリュックを下ろして鍵などを取り出さないといけない。この日常の些細な動作をもっと便利にできないか、という発想で生まれたのです。
ーまさに日常生活の問題意識が大事ということですね。
昨年度大会、高校生のどんな点を評価した?
ーではマイナビキャリア甲子園に取り組む高校生へヒントなども聞いていきたいのですが、昨年のセコム代表チーム「無所属部所属」の子達にはどんな思い出や印象がありますか?
仙石:彼女たちのリサーチ力は圧巻でしたね。彼女たちのアイデアは、セコムが出資しているスタートアップの技術を活用したものだったのですが、彼女たちはセコムのホームページだけでなく、あらゆる情報を調査して、今セコムが力を入れていきたいと考えている事業に行き着いた。豊富なリサーチ力に基づいたビジネスアイデアは本当に素晴らしかったです。
沙魚川:無所属部所属は本当に頑張っていましたね。決勝前日に、彼女たちの中で「スライドを全部作り替えた方が良い!」という決断になって、私たちも「え、間に合うの?」とハラハラしていましたが、本当に熱量高く、本番ギリギリまでより良いプレゼンにしていく努力を怠りませんでした。でも決勝大会当日、会場に入って豪華なステージを見て萎縮してしまい、チームメンバーの一人は緊張のあまり立てなくなってその場にへたりこんでしまいました。本番前、「沙魚川さんがステージ前の席にいると緊張する」と言われ、私は会場の脇で見守っていたくらいです(笑)。それが、リアルな高校生の姿だなと思いつつ、でもそれくらい緊張している状態でいながらも最後まで堂々とやりきりました。本当に立派だったと思います。
ーマイナビキャリア甲子園には高校生、企業の絆のドラマがありますね。では最後に、高校生の皆さんにメッセージをお願いします。
仙石:3年間しかない高校生活で、学校の授業や部活、そして進路のことなど高校生は多感な時期だと思います。そんな中、マイナビキャリア甲子園にチャレンジすること自体素晴らしいのですがが、ぜひ自分たちのベストを尽くしてほしいですね。たくさんの人に意見を聞くのも大切ですが、自分たちの感覚、意見を最後まで信じることも大切だということを忘れないでほしいです。
沙魚川:とにかく楽しく考えてほしいですね。大人の意見や考え方に寄せるのではなく、自分たちの周りにある日常を観察してみてください。無意識のうちにやっている不思議な習慣がきっとあるはずです。そうしたことを見過ごさずに、何故こうなってるんだろう?と考えてみる。「もっとこうなったら楽しいのに」と想像してみる。そういうところから始めてみてください。