2016年からキャリア甲子園に参加し、過去に総合優勝チームも輩出したバイエルが2021年のテーマに選んだのは「人々の医薬品へのアクセス向上」または「農業生産者の安定的な食糧生産」につながる新たなビジネスの提案。そして、世界中で取り組まれている「SDGs」や「サステナビリティ」も重要なキーワードになりそうだ。グローバルに事業を展開するバイエルは2021年のキャリア甲子園に何を期待するのか?バイエルの小野さんと齋藤さんにお話を伺った。

お話を伺った方

小野 智行さん バイエル薬品株式会社 オンコロジー領域事業部 消化器領域営業 東京営業所

山口県出身。生物に興味があり、大学で生命科学を学ぶために上京。遺伝子を扱う研究室に入り、日本の製薬会社にMRとして2012年に入社。肝疾患治療薬や胃薬などを扱う仕事をしていたが、がん領域に携わる仕事がしたいと考え、2017年にオンコロジーMR(医薬情報担当者)としてバイエルに入社。

齋藤 由美子さん バイエル薬品株式会社 循環器・腎臓領域事業部 血栓症・肺高血圧症領域マーケティング 肺高血圧領域マーケティングマネジャー

両親とも医療関係の仕事だったことから医療に興味を持ち、大学では薬学を学ぶ。医療の中でも色々な仕事を経験したいと考え、バイエルにMRとして入社。その後、家族の仕事の関連でバイエルを一度退職し、シンガポールなどで働いた。出産育児休暇を経て2013年にバイエル復帰。

歴史ある世界有数のグローバル企業、バイエル

バイエルの小野 智行さん


ーキャリア甲子園には連続してご参加いただいていますが、改めてバイエルはどのような会社か教えていただけますか?

小野さん:バイエルはドイツに本社を置き、150年以上の歴史を持つグローバル企業です。ヘルスケアと農業関連を中核事業としており、人と植物の健康に寄与する製品やソリューションを開発、提供しています。ビジネスを通じて、世界が直面する高齢化と人口の増加がもたらすグローバルな課題に取り組んでいます。

齋藤さん:今年のキャリア甲子園のテーマにも込められていますが、バイエルは国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に沿い、サステナビリティ(持続可能性)をビジネス戦略の重要な要素に位置づけています。ビジネスの成長を維持しつつ、グローバルレベルの課題に対応してSDGs達成にいかに貢献するか。世界規模で事業を展開するバイエルがバランスを取りつつ進めていくことは、大きなチャレンジです。

ー素朴な疑問なのですが、どうして企業はサステナビリティにそこまで取り組もうとするのでしょうか?

齋藤さん:企業として社会に貢献する役割があるから、というのももちろんありますが、企業が経済活動を継続するためには、その土台となる地球環境と社会基盤を守る必要があるためです。例えば、昨年から多くの企業が新型コロナウイルス感染症の影響を受け、製品やサービスの提供が容易ではなくなりました。つまり、環境や社会の変化は企業の業績にも非常に大きく影響するのです。

小野さん:同時に、サステナビリティに関する取り組みは、新たなビジネスにつながる場合もあります。例えば、バイエルの農業分野におけるサステナビリティの取り組みでは、安全な農薬の開発・使用法の普及・散布技術の向上により安定的に食糧を生産しながら人々の健康を守ること、農薬使用量の削減により環境負荷を減らすことを実現するために、ドローンによる農薬散布やAIによるモニタリングサービスといった新たな事業を開発・提供しています。

齋藤さん:そして、世界共通目標であるSDGs達成に向けたサステナビリティへの取り組みが十分でない企業は、企業を取り巻く多様なステークホルダー(顧客、株主・投資家、取引先、地域社会、従業員など)から選ばれなくなってきています。サステナビリティに関する取り組みは、安定的な事業活動の継続、新たなビジネス機会の創出、ステークホルダーとの関係構築といったビジネスの観点からも重要だからこそ、世界中の企業が推進しているのです。

バイエルがテーマに込めた想い

バイエルの齋藤 由美子さん


ーありがとうございます。よくわかりました。では、今年のキャリア甲子園2021のバイエルのテーマについて教えてください。テーマの中に「医薬品」と「農業」という異なる話が出てきますが、高校生が取り上げるのはどちらか片方で良いのでしょうか?

小野さん:はい、どちらか片方で構いません。キャリア甲子園での発表時間を考えても、それが現実的かと思います。この2つはそれぞれ非常に大きな、世界が全力で取り組まなくてはいけない課題ですので、皆さんの提案ではどちらかに絞って深く考察し、アイデアを形にまとめていただければと思います。

ー医薬品、農業それぞれについてお聞きしたいのですが、まず、「医薬品へのアクセス向上」とはどういうことでしょうか?

齋藤さん:医薬品を必要とする人が必要なときに手にできるようにするという意味です。貧困が深刻な途上国では、医療体制の整備が進んでおらず、必要とする人の手に医薬品が届きません。バイエルもサステナビリティの取り組みの一環として、途上国の人々の医薬品へのアクセスの課題に取り組んでいます。一方、日本では、充実した医療体制のもと高度な治療も行われていますが、既に海外で使われている新しい薬(新薬)が日本で承認されて使えるようになるまでに時間差、いわゆる「ドラッグ・ラグ」がある場合もあります。例えば、日本では欧米諸国と比較し、医薬品の有効性や安全性を確認するための試験の要件などが異なり、承認されるまでに多くの時間がかかることがあり、患者さんはその間、新薬による恩恵を受けられず、病気によっては生死にかかわることになります。新型コロナワクチンもその一例です。また、日本で承認されている医薬品であっても、すべての医薬品が全国すべての医療機関で一律に使用されているわけではありません。最適な治療にアクセスできるかは、地域または治療選択肢に関する知識の差によって変わってくる可能性もあります。日本のバイエルでは、知識のギャップを改善するために、啓発活動や教育支援なども行っています。

ーなるほど。医薬品へのアクセスの課題は途上国でも日本でもあるので、課題解決につながる新たなビジネスとして、いずれの提案でも良いですね。では、農業の方も教えてください。「安定的な食糧生産」とは、具体的にどういうことなのでしょうか?

小野さん:日本は農地として利用できる国土面積が限られているため、品目によってはその多くを輸入に頼っており、農業従事者数も年々減少しています。また、農業は天候や災害により大きな影響を受けるため、事前の予測や被害を受けた場合の回復が難しいです。さらに、環境・人への負荷を考慮しながら農薬や技術を活用し、高品質・高収量の作物生産を目指す必要があります。一方、単に作物の生産量を増やせば良いかというと、そうとも限りません。豊作で農作物がとれすぎた場合、市場へ大量に出荷すると値段が極端に下がる値崩れにつながり農業生産者の収入が減ってしまうため、農作物が大量に廃棄されてしまう場合もあります。このように、農業にはさまざまな課題があり、世界規模の温暖化や人口増加が更に問題を深刻にしています。私たちの命をつなぐ食糧を安定的に生産するために、どのようなアイデアや技術があるか、そしてそれが新たなビジネスとして機能するためにはどのような形が考えられるか、サステナビリティと関連付けて検討していただきたいと思います。

ー短期的に農作物がたくさん生産できれば良いという視点ではなく、中長期で安定的な食糧生産につながるビジネスについて考えなくてはならないということですね。

齋藤さん:そうですね。難しいテーマだと思いますが、ぜひ皆さんの柔軟な思考で検討していただけたら嬉しいです。

キャリア甲子園攻略のヒント


ーバイエルのテーマを考えるうえで、高校生に知っておいてほしい企業理念などはありますか?

小野さん:「Health for all, Hunger for none (すべての人の健康を、飢餓をゼロに)」これが、バイエルの企業としての目的である「Science For A Better Life」に沿って達成しようとしているビジョンです。私たちバイエル社員は、常にこのビジョンを意識しながら日々の業務に取り組んでいます。

齋藤さん:また、バイエル社員が意識すべき4つの行動指針としてリーダーシップ、誠実さ、柔軟性、効率性が示されており、英語にしたときの頭文字をとって「LIFE」と呼んでいます。バイエルではさまざまなバックグラウンドを持つ社員が働いていますが、ビジョンや戦略、行動指針を共有することで、全員が同じ方向を目指すことができるのです。しかし、イノベーションを起こすためには、私たちバイエルだけでは達成できないこともあります。皆さんの提案ではぜひ、多様なステークホルダーとのコラボレーションも視野に入れていただくと良いかもしれません。

ーでは最後に、キャリア甲子園2021に挑戦する高校生の皆さんにメッセージをお願いします。

小野さん:2020年から続くコロナ禍で、社会は大きく変わりました。高校生の皆さんも、文化祭や修学旅行が無くなったりして、みんなで何かをやり遂げることが少なくなっているのではないかと思います。だからこそ、キャリア甲子園は楽しみながら、協力しあって取り組んでほしいです。ビジネスコンテストであるキャリア甲子園に参加することは多くの時間と作業を要し、普段とは異なる分野の調べものや発想が必要となるかもしれません。でもだからこそ、準備作業にチームで力をあわせて取り組むことで、これまで以上に友情が深まるのではないかと思います。

齋藤さん:私は、バイエル全体で進めるインクルージョン&ダイバーシティプロジェクト(多様性を尊重し社員個々の能力発揮と企業としての発展につなげる社内の取り組み)に参加した経験から、忙しい中でも成果につながる効果的な時間の使い方や、普段とは違う角度から物事を眺めてみることで新たなアイデアが生まれたり、効率が高まったりすることを学びました。高校生の皆さんも、勉強や部活などで忙しいと思いますが、ぜひ時間を上手に使っていただき、私たちにも思いつかないアイデアが出ることを期待しています。また、皆さんが大学生・社会人になったとき、キャリア甲子園を通じて経験する一連のプロセスからの学びを活かせる場面が数多くあると思います。ぜひ楽しみながら挑戦してみてください。

(PP-GEN-JP-0220-16-09)

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