2016年から毎年キャリア甲子園にテーマを出題しているバイエル。ヘルスケアと食糧関連のライフサイエンス分野を中核として事業展開しているグローバル企業だが、今年のキャリア甲子園のテーマは「働き方」だ。2020年、新型コロナウイルスによって人々の生活は一変した。高校生の学校生活にも変化が訪れたが、企業で働く人々にも在宅ワークなど「働き方の変化」が広がった。

お話を伺った方

バイエル薬品株式会社
マーケットアクセス本部 循環器・腎臓領域マーケットアクセス&リージョナルアクセス
松下 梨絵さん

2004年バイエル薬品に入社し、MR(医薬情報担当者)として、地域医療連携や医療制度の動向を考慮した情報提供活動や会合の提案、運営に従事。現在は高校生向けの健康教育「かがやきスクール」や循環器疾患領域の疾患予防や治療を啓発する取り組みに尽力している。プライベートでは1児の母親として、育児と仕事の両立に奮闘しながら、大学院に進学してMBA(経営学修士)課程で勉学。さまざまな業界業種の人々と日々意見交換も行っている。

バイエル薬品株式会社
循環器領域事業部 関西エリア 大阪病院第1営業所
枦山(はぜやま) 哲也さん

大学卒業後、広告代理店に就職し、主に広告の営業に従事。その後、2011年に製薬業界にMRとして転職。MRの仕事を通してバイエルに出会い、2014年からバイエルのMRとして働き始める。現在、循環器領域事業のMRとして業務に携わると同時に、バイエル全体で進めるインクルージョン&ダイバーシティプロジェクト(多様な働き方を推進する社内の取り組み)のメンバーに選抜され、女性の管理職登用をさらに高めていくことを目指し、プロジェクト内のチームリーダーとして活動中。プライベートでは自閉症児を育てる父親。

企業によって異なる「働き方」の対応

ーまず、今回テーマ設定をいただいた背景を教えてください。

枦山さん:バイエルは世界中で事業を展開する多国籍企業であり、10万人以上の社員が世界中で働いています。社員一人一人が背景、経験、考え方も異なる中で、いかに有意義かつ継続的に働いていけるかどうかは、バイエルだけではなく世界中の企業にとって重要な課題だと言えます。

松下さん:バイエルは、日本でも100年以上にわたって事業を展開してきました。日本で継続的に働く仕組みをつくるためには、少子高齢化社会による労働人口の減少といった社会の大きな動きに加えて、たとえば男女格差や勤務体系といった課題にも向き合っていく必要があります。また、現在では、育児や介護といったプライベートな状況への対応も求められています。さらに、今年に入ってから新型コロナウイルス感染症により、日本だけでなく、全世界における人々の生活に大きな変化をもたらしています。キャリア甲子園に参加する高校生の皆さんにとっても、多様なライフステージや環境変化の中で“継続的に働く”ということは、近い将来重要になってくるはずのテーマですし、今回の参加を機に自分の将来について考えてもらえたらと思っています。

ーバイエルはドイツに本社を置く多国籍企業ですが、日本の企業と「働き方」の面で大きく異なると感じる点はありますか?

枦山さん:私は以前日本企業で働いていましたが、日本の会社ならではの良い点はありつつも、まだまだ年功序列(年齢や勤続年数に応じて地位が上がる)の風土が強いのではと感じさせられることもありました。バイエルもそうですが、外資系企業では日本の会社ほど年功序列については一般的ではないように私は感じています。バイエルでも、仕事に対しての能力や意欲が高い社員にはいろいろな経験をしてもらいたいと考えられていて、社歴の浅い人や若い人でも責任のある仕事へのチャレンジができるように配慮されています。

松下さん:私自身の経験や社内の人々を見ていると、仕事の役割分担が明確化されており、目標達成に向けて社員がcollaboration(協同作業)していると思います。そういう組織環境がある企業では、仕事の専門性を高められると感じます。日本企業で働く友人の話を聞いていると、仕事を共有して一体感を高めteamwork(共同動作)で取り組まれているように思います。そのため、幅広い経験が積める組織環境だと思います。会社によって組織文化が異なるため一概に言えませんが、国籍や文化、価値観、風習などが働き方にも影響していると思います。

ーバイエルは今回の新型コロナウイルスの対応もかなり早かったと聞いています。日本の企業は対応にかなり差がありました。なぜ、バイエルはスピーディーな対応が出来たのでしょうか?

枦山さん:2月にはもう在宅勤務の指示が出ていました。これには二つ理由があります。一つは、バイエルはグローバル企業なので世界中から情報が入ってきやすかったこと。日本の2月といえば、まだコロナに関してじわじわと話題に上がり始めた時期でしたが、欧米では既に重大な問題として顕在化していました。もう一つは、製薬企業の責任として、特にMRは日々医療従事者と接する仕事でもありますし、感染の可能性を最大限避けるように、早い段階から会社をあげて努めてきたということがあります。

松下さん:もう一つ付け加えるとすれば、経営陣のリーダーシップがあげられると思います。新型コロナウイルスの対応における社員の安全面を考慮した意思決定を経営陣がスピーディーに行なったことが大きかったのではないかと感じています。

社員の意欲と能力を尊重することが企業成長につながる


ーなぜ社員が働きやすい会社である必要があるのでしょうか?継続的に働ける仕組みを取ったほうが、会社として強くなるということになるのでしょうか? 

枦山さん:社員の働きやすさは企業成長とリンクしているからです。以前は製薬業界にも男性中心の風土がありましたが、今では多数の女性が活躍しています。どの企業でもそうですが、誰であっても優秀な方が長く働けるようなシステム作りが重要です。極端な言い方をすれば、仕事のパフォーマンスよりも性別が重視されてしまうような会社では成長は見込めないということです。

松下さん:女性の就業が増え社会進出が進む一方で、介護、育児を理由に退職する人の割合をみると、まだまだ女性が圧倒的に多いのも現実です。日本では、労働人口の減少につながりかねないほど、少子高齢化が深刻です。その中で会社を飛躍させていくためには、社員が働きやすい仕組みを構築し、働く意欲があるのに働けないといったことがおきないように、環境を整えていく必要があると思います。それは性別のみならず、国籍や年齢、宗教や価値観などあらゆることを包括するものでなくてはなりません。

ーなるほど、企業が成長していく上で「働きやすい」ことが重要な考え方なのだということがわかりました。今回、高校生には自由に考えてもらいますが、バイエルが実践していることはありますか?

松下さん:例えばバイエルでは「LIFE」(Leadership、Integrity、Flexibility、Efficiency)と呼ばれている価値観を社員全員が共有しています。これらの価値観はステークホルダーとどのように関わっていくのかの指針と円滑なコミュニケーションの構築に役立っており、働きやすい職場環境作りにつながっています。そのほか会社が社員の意欲的なチャレンジを応援する風土もあります。社内公募の制度も充実していて「この仕事をやりたい」と手を挙げて選考に通れば社内で希望の部署に異動もできます。私自身、自ら応募して今の仕事に就きました。やる気さえあれば、他国のポジションに応募して海外勤務するに挑戦することも可能です。

枦山さん:私は現在、通常業務とは別に社内のプロジェクトにも関わっています。ダイバーシティに関するグローバルレベルの取り組みで、私はこのプロジェクトの中で女性のキャリアに関する担当をしています。女性の管理職を今後さらに増やしていく戦略を考え、実行に移すためのアクションプランを策定しています。日本では長い間、働き手の大部分を男性が占めていましたが、今後は女性がますます活躍していかないと、社会や企業の成長が行き詰まってしまうかもしれません。男性だから、女性だからという概念をいったん捨てて、性別のみならず国籍や年齢、宗教、職歴、学歴などに関わらず誰しもが働きやすい環境を整えて成長していくというのがプロジェクトの基本となる考え方です。

自分ごととして考えてみよう


ーそれでは最後に、キャリア甲子園に挑戦する高校生にメッセージをお願いします。

松下さん:普段の生活の中で気づいたこと、自分が思っていることの全てを提案に盛り込んでほしいと思います。働いた経験がないからこそ見えるものが、高校生の皆さんにはあるはずです。応募される皆さんは同じ高校生であっても、学校や学年、専攻、住む地域などそれぞれが異なる状況で生活し、勉強しているはずです。チーム内で討論し、さまざまな状況にある多様な人たちが働き続けるために、職場や生活の場で大きなうねりを起こすようなアイデアをぜひ聞きたいと思っています。企業間をまたいだ施策や業界全体、あるいは経済界や国をあげての取り組みといった視点で考えてみるのも良いと思います。男性や女性だから、日本人だからドイツ人だからといったことにとらわれず、あらゆる既成概念を取り払って、自由な発想を持つようにしていただきたいですね。今回バイエルのテーマに取り組むことで、卒業や進学後についてより具体的に思いを巡らせたり、高校生の皆さんがまだ未体験の「企業で働いていく」ということについて、実際に働いている人たちの状況や、自分がそこに加わった時のことを考えるきっかけにもなれば嬉しいです。

枦山さん:高校生の皆さんは、まだ企業に属して働いたことがないでしょうから、なかなかイメージしづらいかもしれません。とはいえ、コロナ禍でオンライン授業などを経験し、世の中が大きく変わってきていることは実感されたはずかと思います。まずはご自身がこれから社会に出て、組織に入ってからどのように働いていくか、将来発生するであろうさまざまなライフイベントを思い浮かべてみてください。それぞれの場面で、どのようなサポートがあれば継続的に働いていけるのか、また自分だったらどのような解決策を導入してみたいか、企業で働くことのメリットや思いついた解決策のイメージを、将来自分が働くことに思いをはせながら、大きく膨らませてみてください。同時に企業側の目線で、社員が働きやすい環境を整えることのメリット、それがビジネスとして成り立つのか、という点も視野に入れると、より深みのある施策になってくると思います。
今回のテーマである継続して働くということについては、ずっと同じ会社で勤めあげるのも、転職も、キャリアの上での大事な選択肢であり、人それぞれの「働き方」があると思います。いずれにしても組織の一員として、働く形を継続的に続ける、企業人としての生き方を考えてみてください。私自身も、コロナ禍においてこれまでの考え方が通用しなくなるくらい「働き方」が変わったことを実感させられました。「働き方」と一言でいっても、さまざまな選択肢がある、ということを最後に伝えておきたいです。

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