テーマ解説2026

TDI テーマ解説インタビュー

2026年4月に社名を「情報技術開発株式会社」から「TDI株式会社」へと変更し、新たなスタートを切ったTDI。過去2年、高校生にテーマを提供してきたが今年も新たな問いを投げかける。
今年TDIが設定したテーマは、「人の優しさや心の温かさが通うIT」。一見、テクノロジー企業とは思えないテーマ設定だが、そこには企業理念と大会テーマに真正面から向き合った思いがあった。(取材:羽田啓一郎)

お話を伺った方

伊藤 亘崇さん
高校時代はテニスに精を出していた。もともと数学と物理が得意科目だったので文理選択では理系を選択。理学部物理学科へ進学した。大学進学後もテニスに熱中していた。就職活動の時には、社会的にもITの存在感が増していたこともあり、TDI(旧社名:情報技術開発株式会社)に入社を決める。エンジニアとして働いた後、現在の経営企画の仕事に従事。

井出 詩帆さん
高校時代は読書活動や文章を書く文芸部に所属。メディアに関心があったので、社会情報学が学べる大学へ進学した。大学でも文芸サークルに所属していたが、ちょうどSNSやブログが話題になっていた時代だったので、ITやインターネットに関する勉強を始める。TDIに入社を決めたのは就職活動時に社風が合うと感じたから。総務の仕事をした後、現在の経営企画の仕事に就く。

TDIとはどんな会社なのか?

ーTDIはITシステムを作るシステムインテグレーターという業種の企業ですが、高校生には馴染みがない言葉だと思います。まずこの辺りから解説いただけますか?

伊藤さん:高校生の皆さんにとってITと聞くとパソコンやインターネットが思い浮かぶかもしれません。もちろんそれらもITの一部ですが、ITはそれらのツールを含め、私たちが生活していく上で基盤となる、社会インフラの一つです。社会を支えるさまざまな仕組み、例えば銀行のATM、交通系ICカード、病院の電子カルテ、コンビニのレジシステムなど、その裏側にはすべてITシステムが動いています。そのシステムを開発する会社のことをシステムインテグレーターと呼びます。私たちTDIはシステムインテグレーターとして、お客様のITシステムを企画・設計から開発・検証まで一貫して手がける会社です。

ー具体的にはどのような業界のシステムを手がけているのでしょう?

井出さん:金融・保険・流通・製造・公共など、幅広い業界のお客様と取り引きがあります。国内のIT企業は約3万2000社あると言われていますが、TDIはITの黎明期から約60年続く老舗の一社です。多くの大手企業様から直接お仕事をいただいているという点も、私たちの強みの一つです。多重下請け構造になりがちなIT業界の中で、お客様と直接やりとりできる立場での企画・設計から、開発・検証まで、TDIグループ全体でワンストップで提供できる体制を整えています。

ー過去2回、マイナビキャリア甲子園に参加いただいていますが、高校生たちと触れ合ってみていかがでしたか?

井出さん:マイナビキャリア甲子園で勝ち上がってくる高校生の皆さんが本当に素晴らしく感動しています。こちらがアドバイスしたことを自分たちなりに咀嚼して次のミーティングまでにしっかりアウトプットとして出してくる。親子ほど年齢が違うのに、対等に議論できるのが素晴らしいです。

伊藤さん:過去2回は惜しくも受賞には届かず、こんなに頑張ってくれた高校生の皆さんに、最後はいい結果を残してあげられるサポートができたらと非常に強く感じていました。そう考えた時に私たちにできるのは高校生の皆さんにとって取り組みやすいテーマを出すこと。過去の2回を振り返った時、当社が提示したテーマは、あくまで当社側の視点で見たテーマであったという反省に辿り着きました。マイナビキャリア甲子園の主役は高校生の皆さんです。今年はマイナビキャリア甲子園の大会テーマもしっかり踏まえながら、我々TDI起点のテーマ設定ではなく、キャリア甲子園、そして高校生の皆さんを起点にテーマを据えよう、と考えたのです。

AIというキーワードをあえて外したテーマに込めた思い

ーマイナビキャリア甲子園に参加する高校生に対する強い思いが感じられますね。では今年のテーマについて教えてください。

伊藤さん:「情報があふれ、選択肢も多い現代社会の中で、あなたは人の優しさや心の温かさを感じていますか?その実現に、ITはどんな役割を担えるだろうか」というテーマです。昨年はテーマに「AI」というキーワードを入れたのですが、今年はあえて外しました。

ーなぜAIというキーワードを外したのでしょう?

伊藤さん:理由は二つあります。一つは、昨年AIをテーマに入れたのは「AIに力を入れている企業だと伝えたい」という、私たちTDI側の思いからでした。でも今年は先程もお伝えしたとおり、改めてマイナビキャリア甲子園・主役である高校生を起点にしようと考え、私たちの都合を前面に出すのはやめよう、と。もう一つは、昨今の時代背景の中ではAIというキーワードがなくても、アイデアの中で登場するだろうから、わざわざ言わなくてもいいだろう、と。

ー大会テーマからテーマを考え始めたとのことですが、どのような思考プロセスだったのでしょうか。

伊藤さん:今年の大会テーマである「UNLOCK」を拝見したとき、「情報も選択肢もあふれている、一見豊かに見える社会。でも本当にそうか?」という問いかけをされているのだと感じました。その大前提に立って、私たちの企業理念——「心でITを」「人にやさしく心あたたかな企業に、社会に親しまれ貢献する企業に」——と掛け合わせたときに、今年のテーマが生まれました。

ー企業理念の「心でITを」というフレーズも印象的です。テクノロジー企業らしくないとも言えますが。

井出さん:ITはあくまでも手段なんです。それをドライブするのは結局、人間の心です。便利なシステムを作ることがゴールではなく、その先に優しい社会・温かい社会があってこそ意味がある。この考え方は創業以来ずっと変わっていません。当社は今年、社名を「TDI」に変更しました。それに伴い企業理念も「情報技術で未来を創造」というフレーズから「心でITを」に変えました。ただゴールは変えずに、「人間がITをドライブする」という部分をより強調した形になっています。

ー「優しさや温かさを感じていますか?」という問いかけは、逆に言うと「感じられていないのでは?」という問題意識なのかな、とも思ったのですがいかがですか?

伊藤さん:これはあくまでも私個人が感じていることですが、ITが発達した社会に違和感を覚えることはあります。情報がたくさんある社会になって、確かに便利にはなっています。でも感動する機会が昔と比べて減ったなとも感じていて。不便さの中にある感動というか、充足されていない状況にある喜びというか、そういうものが少なくなってきているのではないかという気はしています。

井出さん:私は情報を鵜呑みにしてしまうことへの違和感がありますね。情報へのたどり着き方も、得られる情報自体もたくさんあるのに、なぜか一つのものをまるっと受け入れてしまう。自分でもう一段深く調べたり人に聞いたりすべきなのに、便利さからAIに聞いたことをそのまま信じてしまうということが自分自身にも起きているし、周りを見ていても感じます。批判精神が薄れてきているなと。

ーこの一年で急速に進化したAIですが、ビジネスアイデアを出そうと思った時、高校生にとってはアプリと結び付けようという印象がまだまだ強いかもしれません。

伊藤さん:そうですね、実際、過去のマイナビキャリア甲子園に出場いただいたアイデアの成果物としてゲームアプリを扱った作品は毎年多くいただくのですが、実はゲームアプリはビジネスとして成立させるのが非常に難しいプラットフォームだと考えています。過去にそういったアプリで優勝しているチームもありますし、それを否定しているわけではありません。分かった上で選んでいるなら問題ありませんが、とっつきやすいからという理由だけで選ぶと、実は実現可能性や持続可能性の面でかなりハードルを上げてしまうことになります。チームでよく話し合って判断してほしいですね。

ー何でもかんでもAIを使えばいいというわけではないですものね。

伊藤さん:AIは「人間がある程度のスキルと時間をかければできること」を、短時間でミスなく大量にアウトプットしてくれるものだと思っています。人間にできないことはAIにもできない。ただ人間がやれば時間のかかることを、一気にやってくれる。そう理解しているかどうかで、AIとの向き合い方はだいぶ変わってくると思います。AIは、何でもできる魔法ではありませんから。

高校生へのメッセージ

ーありがとうございます。では最後に、高校生にはどのようなアイデアを期待していますか?また、TDIのテーマに取り組む上で気をつけてほしいことはありますか?

伊藤さん:ご自身の身の回りにある違和感、意外とたくさんあるかと思います。ぜひその違和感を突き詰めてください。最初からAIに答えを聞くのではなく、自身で経験した違和感を起点に考えてほしい。また、アイデアはなるべく大きく考えてほしいです。きれいにまとまっているアイデアより、影響範囲が広くてスケールのある発想の方が面白いです。小さくまとまらずに、思い切って大きなビジョンを描いてみてください。

井出さん:高校生の皆さんはデジタルネイティブ世代として、私たちには見えていない視点を持っているはずです。過去2年間、マイナビキャリア甲子園に参加した高校生たちと実際に話して、その理解力や発想に何度も驚かされました。ぜひ既成概念に縛られず、自分たちならではの感覚で、このテーマに向き合ってほしいと思っています。

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