テーマ解説2026

テーマ解説インタビュー Qoo10

誰にとっても馴染みのある「買い物」を扱うQoo10が、今年もマイナビキャリア甲子園に参加する。昨年度大会でQoo10のテーマに挑んだ高校生のアイデアのひとつは、そのあと実際の企画として世に出ることになった。高校生が考えたアイデアが、そのまま社会で動き出したのだ。

今年のテーマには「新旧が共存する多様な消費機会」。この新旧という言葉の奥には実は深い意味が込められていた。(取材:羽田啓一郎)

お話を伺った方

モラーノ 絢香さん
高校2年生まで日本で生まれ育つ。交換留学プログラムのコンテストで入賞し、アメリカインディアナ州の公立高校に留学を経験する。日本語が喋れない環境でさまざまな国の人たちと生活をしていく中で、ITがコミュニケーションのあり方を変えると実感し、ITを総合的に学べる大学に進学。その後、インターネットメディア系の企業でキャリアアップを重ね、現在のeBay Japan合同会社に入社。Qoo10の戦略マーケティングに取り組んでいる。

昨年の大会を振り返って

ー昨年Qoo10の代表に選ばれたのは女子2人組の「borderlesz」でした。彼女たちをQoo10代表チームにした理由を教えてください。

モラーノさん:どのチームも本当に素晴らしくて、代表チームの選考は非常に悩みました。代表チームとして選んだ『Borderlesz』が提案したのは、香りをデジタルデバイス上で再現するという非常に挑戦的なアイデアでした。「実現性はどうなのか」「投資はいつ回収できるのか」という現実的な問題点を踏まえた上で「だからこそ、今後Qoo10が挑戦すべき意味がある」と私たちにハッキリと提案してくれた姿勢に心が動かされたんです。

予算やリソースなど、足りない部分は私たち企業側が工夫するべき宿題であって、それ以前にここに向かうべきだ、という「面白さのベクトル」を示してくれた。専門性が高いことについては大人でも考え付くことが多いですが、彼女たちは自分で欲しい・楽しいと思うところに集中していたことがポイントでした。

ー一方で、準決勝で敗退したチームのアイデアが、実際にQoo10内で実装されたと伺いました。

モラーノさん:『QBrusher』というチームが提案した、男性ユーザーに向けたアイデアですね。2026年7月のメガポ期間中にQoo10公式HP内で「男磨き」をテーマとした特設ページを公開しました(詳細はこちら)。
Qoo10は女性のお客様が約8割なので、私たちにとっても取り組む意味のあるテーマでした。しかも、3ヶ月で実現できるアイデアだったんです。

マイナビキャリア甲子園の審査項目は【実現可能性】の高さだけが評価ポイントではないため、どうしても準決勝大会で敗退となってしまったのですが、非常に素晴らしいアイデアでした。負けてしまったチームのアイデアでも光るものがあれば共創したいと思っていますし、それは今年も同じスタンスです。

Qoo10とは――「お買い物と、あそぼう。」と、8年目の転換点

ー改めて、今年初めてQoo10を知る高校生に向けて、どんなサービスなのかを教えてください。

モラーノさん:私たちは「Qoo10」というインターネット総合ショッピングモールを展開している会社です。Qoo10では、ファッション・ビューティー系、ほかにフードやデジタル、エンタメなど幅広い商品を展開しています。

ほかにもECサイトはたくさんありますが、Qoo10は「お買い物と、あそぼう。」というコンセプトを大切にしていて、それが他のサービスと異なる点だと思います。
私たちはECサービスとしては後発だったので、このマーケットで戦っていくためには特徴的なコンセプトが必要でした。最初は「衝撃コスパモールQoo10」というコピーで安さを打ち出した展開をしていたんです。でも安さだけではなかなか他のサービスとの違いが生まれない。そこで「お買い物と、あそぼう。」というコンセプトに転換したのです。その象徴が、年4回の「メガ割」です。メガ割が始まるとSNSで「#メガ割」をつけてユーザーの皆さんがおすすめを紹介し合う動きが起き、何を買うかを話し合う「メガ割会議」の動画がたくさんアップされる。ユーザー同士が話し合い、楽しみながらお買い物ができるカルチャーを作ることができたのです。

ー他にも特徴や強みはありますか?

モラーノさん:2018年に日本国内でEC取引に関わる様々なサービスを展開しているeBayのグループに入ったことです。当時は認知度も低く、そもそも「Qoo10」をキューテンと読んでいただけないような状況でした。eBayのグループに入ったことで手にした武器が2つあって、ひとつは、eBayグループの強味を活かし、より豊富な商品ラインナップを提供できるようになったこと。もうひとつは、開発やマーケティングへの投資が強化されたことです。ユーザーに対して、”Qoo10は安い”以外のパーセプション(認識や印象)を持っていただける余地に投資できるようになったので、そこから「トレンド」を磨くことに集中してきました。

ーその独自のポジションが確立できたのに、また新しいチャレンジを始めるとお聞きしました。それはなぜですか?

モラーノさん:メガ割はもう8年以上続けていて、すっかり習慣化されました。でも、だからといって歩みを止めてはいけません。誰もが知っているラグジュアリーブランドだって、昔の人たちが積み上げた功績があるから現在成功している。だとしたら、私たちは次の新しいことに挑戦していかないと未来に広がらないですよね。現在の成功に慢心しているのは、怠けていることですから。

ーではどんな挑戦をしようとされているのでしょうか?

モラーノさん:オンラインとオフラインの融合です。小売全体の中で、オンライン(EC)比率はまだ10%程度なんです。つまり買い物の90%以上はオフライン(実店舗)で起きている。そこにどう入っていくかがQoo10の新しい挑戦です。2024年に渋谷にライブショッピングのスタジオをつくり、ポップアップや自社イベントもやったのですが、非常に良い感触を得ることができました。これは一過性ではなく常設でやるべきだと判断し、今年10月1日には渋谷にサンプルハウスがオープンし、今後さらに原宿のキャットストリート沿いにMEGA POPUP、原宿駅前に旗艦店を展開する予定です。
こうしたチャレンジで、私たちは2030年に5,000億円企業を目指しています。小売業の年間成長率が3〜4%が平均というなかで、私たちは2桁成長を続けている。実は常に挑戦し続けている会社なんですよ。

今年のテーマ「新旧が共存する多様な消費機会」を考えるヒント

ー今年のテーマにある「新旧が共存する」という言葉は、まさにその文脈からきているのですね。

モラーノさん:そうですね、店舗を単にオフラインの小売として考えるのではなく、もともと強みだったメガ割やライブショッピング、エンタメの領域を掛け算していく。オンラインでもオフラインでも、どちらでも楽しめる新しい買い物体験にアップデートしていきましょう、と。

店舗の中身はまだ申し上げられないのですが、上半期に公開したCMを見ていただくと世界観が伝わると思います。仮想の店舗に入ると、Qoo10だけの特別な企画セットやランキングが並んでいる。あの世界観を近しく再現し、そこにテクスチャーや匂いといった、実物に触れる楽しさを加えていきます。

ーオンラインショッピングなのでAIの出番が多そうですが、テーマの中には「AI」という言葉が入っていませんね。

モラーノさん:AI関連のアイデアは今年のマイナビキャリア甲子園ではとても増えるかもしれませんね。去年まではAIがまだエッジな領域だったかもしれませんが、今年はありとあらゆるところにある。そのなかで、原点回帰の思考に持っていける人、引き算で勝負しようという人がどれくらいいるか。それをすごく楽しみにしています。AIの方が得意な領域で、それでも人間が介在しなくてはならないものは何か、という視点を大切にしてほしいと思っています。

ーでは、「楽しい買い物」は、どう考えたらいいのでしょうか。楽しさの基準は人によって違いますよね。

モラーノさん:おっしゃる通り「楽しい」は主観です。ただ、プラットフォームとしてはそこから最大公約数を取ることになる。そのときの区切り方がすごく大事です。早く届くことが「楽しい」と感じる人もいれば、安いことが「楽しい」人も、流行りが分かることが「楽しい」人もいる。決まった「楽しい」はないですが、購買体験を分解していけば何かしら出てくる。

トレンドも変わっていきますので、正解はありません。自分たちの「楽しい」は何なのかを考え、設定してください。

ー高校生が考えるアイデアの時間軸や、Qoo10の既存サービスに合わせるかどうかは、どこまで意識すべきでしょうか。

モラーノさん:そこは自由でいいです。むしろ高校生の方が情報やトレンドを持っていますよね。私たちのサービスに無理に合わせるより、自分たちが面白いと思うものがまずあって、それをQoo10でやるとしたらどうするか。その順番で考えてください。

ー最後に、参加する高校生にメッセージをお願いします。

モラーノさん:欲しい情報を、欲しい時に、すぐに手に入れることができる時代です。ただし、どのように質問したら正しい答えが出てくるのか、そしてその答えにどれくらい早く順応できるか。そこは高校生の皆さんの方が得意な分野だと思っています。
だからこそその訓練をすること、また大人が言う「これが正しいはずである」という固定観念に対しても問い直す姿勢を、忘れずに持っていてほしいなと思っています。

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