テーマ解説2026

デンソー テーマ解説インタビュー

第13回大会で初めてテーマを出題するデンソー。愛知県刈谷市に本社がありグローバルに展開する自動車部品メーカーだが、実はQRコードを開発するなど、自動車部品以外の分野にも事業を展開している。そんなデンソーが今回のマイナビキャリア甲子園で出題するテーマは、「“信頼できる情報”で人々の安心をつくる新しいビジネス」。なぜデンソーがこのテーマを掲げるのか、社員のお二人にお話を伺った。(取材:羽田啓一郎)

お話を伺った方

浅井 友梨恵さん
愛知県出身。高校時代は合気道部に所属し、1日中練習漬けの3年間を過ごした。小学生のときにイギリスで暮らした経験から「英語を使ってグローバルに学びたい」と考え、国際系の学部がある大学へ進学。就職活動では「日本のいいものに関わって、それを外へ発信する仕事」を軸に据え、愛知県出身者として身近な企業であったデンソーへ。入社後は、製品に使う部品を調達する仕事を経験した後、現在の広報の部署に異動。

由里 浩大さん
大学までバレーボールに青春を賭けてきた。ポジションはミドルブロッカー。大学に進んでからも寮に入って部活漬けの日々を送るが、3年生になった頃「このままでは社会人になれない」と考え、勉強にも本腰を入れ始める。新卒で入社した電機メーカーで営業として従事し、デンソーを担当することに。その当時のデンソーの社長が発した「これからはデンソーがいままでにやったことがないビジネスをやっていく」という言葉に強く惹かれ、その年にデンソーへ転職。現在は新規事業のマーケティングとプロモーションを担当している。

QRコードも開発。デンソーという会社の正体

ー今日はよろしくお願いします。まず、デンソーがどんな会社なのかを教えてください。

浅井さん:高校生の皆さんは聞いたことがない人もいるかもしれませんね。弊社は自動車部品メーカーで、創業以来、お客様である自動車メーカーの声に真摯に向き合いながら、その時代ごとに生まれるさまざまな社会課題の解決に、一緒に挑戦し続けてきた会社です。いまの自動車を支えている重要な製品や技術の多くを、開発し、製造してきました。

ー「時代ごとの社会課題」というのは、たとえばどんなものでしょうか。

浅井さん:弊社はずっと、環境負荷の低減と交通事故のない社会づくりに取り組んできました。たとえば大気汚染が深刻だった1960から70年代、当時どこも達成できていなかった排ガス規制のクリアに貢献しました。また1980年代、交通事故の死亡者が増えてきたタイミングで、エアバッグのセンシングシステムの開発に着手しました。もともとは車に乗っている人の命を守るための技術でしたが、いまは歩行者など車に乗っていない人の命も守るために、事故を未然に防ぐセンサーなどの安全技術の開発にも取り組んでいます。

ー実は身近なところで助けられているんですね。高校生にとっても馴染みのあるサービスもあるのでしょうか?

由里さん:皆さんにも馴染みがあるのはQRコードですね。あれはもともと、工場の部品の製造工程において、情報をもっと効率的に伝達するために生まれた技術なんです。工場の生産効率を上げるための技術だったものが、いまでは決済や交通インフラ、観光案内まで、全く違う分野でも幅広く使われています。

ーQRコードのように、自動車以外の分野にも事業展開しているんですね。たとえば他にどんな事業があるのでしょうか。

浅井さん:たとえば農業です。モビリティ分野で培ってきたセンサーのノウハウを活かして、どういう栽培条件にすればより良く育つのかを見極める。それに加えて、自分たちはさらにグループ会社のもつロボット製造の技術を組み合わせれば、品質のばらつきを抑えて、安定的な収穫が期待できるようになる。このように、工業の強みを農業に活かそうとしています。

なぜ、自動車部品メーカーが「信頼できる情報」を問うのか

ーでは、今回のテーマ“信頼できる情報”とはどういう背景で出てきたのでしょうか。

由里さん:我々は自動車部品を始めとする「モノ」だけでなく、「情報」もずっと扱ってきた会社なんです。モノづくりではお客様のニーズにあわせて、製造や物流に関する膨大な「情報」を効率的かつ正確に管理する必要があります。そうした情報を扱うノウハウを活かし、弊社では“信頼できる情報”を使った新しいビジネスにも取り組んでいます。

浅井さん:いま、たくさんの情報が溢れている中で、高校生の皆さんも何か商品やサービスを見たときに「この情報は本当に正しいのかな」と、判断がすごく難しくなってきていると思うんです。情報が手軽に手に入る時代だからこそ、信頼性や安心感の重要性が増していますよね。デンソーはこれからも“信頼できる情報”を提供する技術を開発していきますが、我々が提供できる“信頼できる情報”をどのように活用すれば、人々の安心な暮らしにつながるのか、高校生ならではの発想で新しいビジネスを考えていただきたいと思いました。

ー実際に“信頼できる情報”を扱ったビジネスとはどのようなものでしょうか。

浅井さん:たとえば、数年前に食品の産地偽装が社会問題になったときに、熊本県産あさりの産地証明のためのシステムを支援した事例があります。この活動は、熊本県から「デンソーにはQRコードでモノとデータを紐づける技術があるが、このあさりが本当に熊本で獲れたことを証明できる仕組みはつくれないか」と相談をいただいたのがきっかけで始まりました。

由里さん:スーパーの野菜にQRコードが付いていて、読み取ると「誰々さんが作りました」と出てくるものはありますよね。でも、誰が作ったかはわかっても、どういう経路で流通してきたかまではあまり見えない。そこで我々がやったのは、「熊本のこの漁場で獲れました」と記録し、「どこの卸へ運ばれた」、そして「どの市場に行き」、最後に「このスーパーに並んだ」と、流通の各段階でスキャンしていく仕組みです。それ以外にも加工や選別などの工程も含めると、スキャンする回数は約6回。それで初めて流通全体がつながるんです。

ー6回というのは、けっこうな回数ですよね。

由里さん:だからこそ、当時のメンバーは足しげく現地に行きました。現地ではどのような作業が行われているのか、どのような仕組みにすれば皆さまに負荷をかけないか、自分たちの目で確認してソリューションをつくった。そこが我々の強みの源泉だと思います。

ー「現地現物」という言葉がデンソーさんのキーワードだと伺っています。改めて、どういう考え方なのでしょうか。

浅井さん:机の上で考えるだけではなくて、現地に実際に足を運んで、自分の目で見て、起きている現象を確認する。目の前の現象を確認するだけでなく、そこで起きている課題や問題点をしっかり確かめるということですね。その上でどういう対策を打てばいいのか、そしてなぜその対策が適切だと言えるのか。そこまで考え抜くことを、我々はすごく大切にしています。

ーとはいえ、高校生からすると「ネットで調べればわかるし、AIに聞けばいいじゃん」と思ってしまうかもしれません。

由里さん:事前のリサーチはもちろんネットでできます。それでも現地に行くと、肌感覚が全く違う。事前のリサーチではつかめない部分が、どうしても残るんです。実際に現地に行って自分で感じないとわからないことはたくさんありますし、そこに事業のヒントがあるのです。

デンソーのテーマの考え方のヒント

ーデンソーさんには「素人発想、玄人実行」という言葉があるそうですね。

浅井さん:弊社が新しい発明に対して大事にしている考え方です。発想そのものは単純だったり、素直だったり、自由で簡単な考え方でいい。ただ、それを形にするときには、熟練の技術や知識を掛け合わせていく必要がある。その両方があって初めて、いい発明が生まれるのではないかという考え方です。

ー高校生は今回、どこまで自由に考えていいのでしょうか。「デンソーさんの事業領域だから自動車で考えなければ」と縛られてしまう気もするのですが。

由里さん:弊社はモビリティ領域の会社ですが、そこにこだわらず、自由に考えてください。この領域でなければいけない、というものは特にありません。私たちが日ごろ気づくことができないような、“驚き”を高校生の皆さんからは期待しています。

ーモビリティの枠を出て構わないということですね。壮大なテーマでなければいけない、ということもないのでしょうか?

浅井さん:壮大なテーマである必要もありません。我々は、お客様である自動車メーカーと一緒にその時々の課題を解決してきた会社です。机の上で答えを出すのではなく、困っている人と一緒になって考えてみる。うまくいかない理由を当事者と一緒に考えているうちに「こうやったらいいのでは」というものが出てきた、というのが我々の歴史です。課題としっかり向き合って、寄り添って考えないと答えは出てこない。そのマインドは、マイナビキャリア甲子園に挑戦する高校生の皆さんにもぜひ感じてもらえたらと思っています。

参加する高校生へのメッセージ

ーでは、最後に参加する高校生にメッセージをお願いします。

由里さん:発想は単純で、素直で、自由でいいと思っています。すごく難しい技術を織り込もうとせず、身の回りにある課題や、解決できたら嬉しくなる問題点をまずは探してみる、というシンプルな発想でぜひ考えてみてください。皆さんの自由な発想を期待しています。ただ、現地現物の精神だけは忘れないでほしい。AIなど便利なツールも活用しつつ、自分の目の前の課題や問題点を実際に見て、感じたことを起点に、ビジネスへのアイデアを広げてもらいたいなと思います。

浅井さん:私が高校生のころはマイナビキャリア甲子園のような場もありませんでした。だからこそ、このマイナビキャリア甲子園に参加している皆さんが眩しく見えます。せっかくの機会なので、いろいろなところに目を向けて、考え抜くという経験をしてもらえたら嬉しいです。

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