昨年度大会では審査員特別賞チームを輩出した河合塾マナビス。今年は優勝を目指し、会社として力を入れていくという。受験予備校として現在通っている高校生もいるかもしれないが、河合塾マナビスのテーマに取り組むと、広い意味での「学ぶ」ことについての意味を改めて考える機会になるはずだ。(取材:羽田啓一郎)
お話を伺った方
齊木 達也さん
大阪府出身。高校時代は野球とバンド活動に力を注いでいた。昔から教えることに関心があり、塾の先生に憧れを持っていたことから、大学時代は予備校の先生をしながらバンド活動をしていた。大学卒業後もバンドマンとして活動していたがその後、幼い頃からの憧れを叶えるために塾業界へ進む。
酒井 茜さん
埼玉県出身。高校時代は陸上部で走り幅跳びと三段跳びの選手として県大会にも出場。幼稚園の頃から先生に憧れがあり、中学の教員免許を取るために大学では教育学科に進学。小学生に関わるボランティアサークルに所属しながら個別指導塾のアルバイトを行っていた。実習やアルバイトを通して公教育ではなく別の形で教育に関わりたいと考え、河合塾マナビスに就職を決めた。
河合塾マナビスとはどのような塾か?
ー昨年初めてマイナビキャリア甲子園に参加されましたが、高校生からさまざまなアイデアが寄せられたと思います。一年振り返ってみていかがでしたか?
齊木:本当にたくさんの高校生の皆さんに当社について考えていただいたのですが、その中で当社が代表に選んだチーム「Ashes」が見事審査員特別賞に輝いてくれました。その成果について、社員一同誇りに思っています。一方、昨年度大会ではマイナビキャリア甲子園に関われていた社員が、限られた一部の有志のみになっていました。今年度大会は昨年以上に様々な部署を横断し、全社一丸となって優勝を目指したいと思っています。

ーありがとうございます。運営事務局としても、力を入れてくださっているのは非常に嬉しく思います。
では改めて河合塾マナビスがどういう企業なのか教えてください。
酒井:河合塾マナビスは大学受験を希望される現役高校生向けの予備校です。映像授業の塾であることに加え、各駅の近くに校舎を構えていること、学習アドバイザーと呼ばれる担当スタッフが生徒一人ひとりにつくことが大きな特徴です。映像授業だけだとモチベーション維持や学習の計画立てなどが難しいところもあるので、それを学習アドバイザーがフォローしています。
齊木:長年の実績がある河合塾ブランドの講師が映像授業を担当しているので、コンテンツには自信があります。それに加えて特徴的なのがアドバイスタイムと呼ばれる河合塾マナビス独特の学習方法です。これは「学んだ内容を生徒からアドバイザーに説明してもらう」というものなのですが、しっかりと授業内容が理解できていないと他の人に説明できませんから、理解度のチェックになっているというわけです。
酒井:これまでの受験では知識の有無を問う出題形式が主流だったのですが、現在は知識を知っているだけではなく、きちんと自分で咀嚼して応用することも求められ始めています。河合塾マナビスのアドバイスタイムは以前からやっていたことではありましたが、昨今の教育業界の変化にピタッとハマりました。
人が「学びたい」と思えるためには
ーなるほど。河合塾マナビスの特長が良くわかりました。では今年のテーマについて教えてください。どのような背景があり、今年のテーマを設定したのでしょうか?
齊木:「昨今の社会環境の変化を踏まえ、河合塾マナビスが乗り越えるべき問題/課題は何か」と全社員に向けアンケートを取ったんです。その中で多くの社員から共通して出てきたキーワードは“学びがどう変わっていくか”でした。これからの未来を担うZ世代やα世代の高校生の皆さんと“学び”について一緒に考えていきたいと思ったのです。

ー学びは実際に変わっていると感じていますか?
齊木:そうですね。これまで河合塾マナビスは、現役高校生へ大学受験合格を目指した事業を展開してきました。しかし近年、推薦入試の比率が増えたり、「大学に行かなくても将来生きていけるスキルを身につけられる」という考え方が出てきたりと、学びの形が多様化していると感じています。
ー一方、タイパやコスパを大切にし、そこまで努力をせずにそこそこの成果を得られれば良い、という価値観の若者も増えていると言われていますが、そのあたりはどうお考えですか?
酒井:大学受験の話だけでいえば、高い目標を持つのではなく、現時点の自分がやれる範囲で目指せる大学でいいかも、と考えている生徒さんは確かにいらっしゃいます。ただ、そこをどうモチベートするかが私たちの仕事のひとつです。目の前の大学受験で考えが止まっているとそこまでモチベーションが上がらないかもしれませんが、大学に行った先で見える環境を視野に入れると考え方が変わります。高校生の進路選択で、将来の選択肢が大きく広がるんですよね。でもその先の人生にどんな影響があるのかは高校生ではなかなか想像できない部分なので、アドバイザーが受験の先にある将来まで、一緒に考えることも大切にしています。
ー予備校業界全体でも、社会環境に合わせて変わっているのでしょうか?
齊木:そうですね。人口減少や価値観の多様化、地域格差など様々な社会変化がある中で、これまでと同じ考え方でやっていてはやがて限界がきます。予備校業界の“教える”は授業1本だけではなくなっていることが多くなっていますね。他社様を見ていても、他の事業に転換していたり、幼稚園・小学校・さらには社会人の教育など対象を広げている学習塾もあります。また習い事に関する事業を始めたり海外事業に目を向けるなど、本当に多様な形になっていますね。
ーつまり、今回のテーマで考えるのは大学受験に限った事業アイデアではなくても良いということですよね?
酒井:はい、構いません。河合塾マナビス、そして河合塾グループの資産を活用して幅広く“学び”について検討してください。河合塾マナビスは「地域密着」「人は資産であり資源」という基本的な考え方も大切にしています。

ー今回のテーマを考える上で“学び”について改めて考えることが大切だろうなと感じています。人の学びたいという欲求、動機はどのように生まれてくるのでしょうか?
齊木:「言われているからやる」や、「やらなきゃいけないから勉強する」という考えの方が、現実的にはやっぱり多いと思います。つまり、外発的な動機づけですね。でも自分の中で勉強する理由や意味を見出せる人の方が継続的な学びになりやすい。我々もアドバイザーという形で、ただアドバイスをするだけではなく、生徒の心の本音を聞き出しながらコミュニケーションをとっています。そのコミュニケーションの中で「あ、自分のやりたいことってこういうことだったんだな」と気付き、モチベーションになる生徒もいます。生徒1人1人モチベーションになるものは違うという前提で話していくと、案外学びの欲求って全員が持っているものなんだなというのは感じますね。
酒井:本当にそうですね。自分で気付くということが非常に重要です。アドバイザーがいろいろと説明しても、生徒自身が気付けない・認めなかったらあまり意味がない。私は、3年前までアドバイザーをしていたのですが、産休育休を経て、今営業企画部で新しい仕事をしています。そうした環境の変化があった時、以前と同じ感覚で仕事をしていてもだめだと自分で気付き、学び始めました。さらには子供を産んで育てる中で、こんなにも知らないことばかりなのかと気付き、日々勉強の毎日です。大人になっても本当に気付きが大事だなというのはすごく感じています。
ーテーマにも入っている「自立を支援する」という言葉の意味がわかりました。では次の質問です。テーマの中に「学びたいすべての人が」という言葉が入っています。この「すべての人」は、高校生に限らないと思って良いですか?

齊木:はい、高校生に限らなくて構いません。今年の大会テーマは「Borderless Age」ですし、日本国内に限らなくても構いません。頭の中にある枠を取っ払うことが、すごく大事なことかなと考えていますので、制限をかけることなく自由に考えていただきたいと思っています。
ー今年は河合塾マナビス一丸となって、と先ほどおっしゃってましたが、会社として「こういうアイデアは受け入れられない」というものはありますか?
酒井:ありません。もちろん、誰かを不幸にするようなアイデアは難しいと思いますが、河合塾マナビスの特長を踏まえてさえいれば考え方は自由です。大学受験における試験では常に答えがあり、正解を求められます。ただ、今回のマイナビキャリア甲子園ももちろん、社会に出てからは正解不正解はなく、一人一人がしっかり考えることが大切です。皆さんの考えるベストな提案を聞かせてください。
ーありがとうございます。では最後に、高校生の皆さんにメッセージをお願いいたします。
齊木:とにかくワクワクしながらやってほしいなと思っています。“学ぶ”ことと、楽しみながら向き合ってほしいです。こうなったらいいなという感情を大事にしながら、取り組んでもらえると嬉しいですね。
酒井:高校生の皆さんは社会に出ていないからこそ、我々にはない柔軟な考え方がたくさん生まれてくると思っています。“学ぶ”とはどういうものなのかという哲学的な問いを、しっかり考えてみてください。
