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昨年、2021年度大会でグランプリチームを輩出した生命保険協会。このチームは生命保険の持つ強みや考え方を活かし、素晴らしいアイデアに昇華させた。高校生が日常生活の中で意識することは決して多くはない生命保険だが、このインタビューをきっかけに生命保険の考え方に触れてみてほしい。(取材:羽田啓一郎)
■お話を伺った方
日下部 大樹さん
どんなスポーツやゲームでもルールを理解していないと良いプレーはできない。社会におけるルールは法律だ、と考えて法学部に進学。学生時代、部活動や飲食店のオープニングスタッフのアルバイトに精を出しチームプレーならではのやりがいを実感したことがきっかけで、社会人になってもチームで動ける仕事に従事できるようにと民間企業を志す。その中でも人々の下支えができる仕事がしたいと考え、生命保険会社に就職した。現在は生命保険協会に出向し、生命保険会社各社等、協会内外におけるパイプ役を務め、各種意見の調整などを担当。
周藤 晴香さん
元々子供が好きで教育に関心があった。世界のニュースを見ていると日本のように経済的に恵まれていない子供たちがいることを知り、大学では教育をはじめとした各国の政策等を幅広く学びたいと政治経済学部に進学。大学卒業後は、社会全体に影響を与えることができ、多くの人の安心に関われる仕事がしたいと考え、生命保険協会に就職。法務部門を経験後、現在は企画部門にてSDGsや保険教育の推進等、生命保険業界と親和性の高い課題への対応などを担当。
■生命保険とは?
ー今日はよろしくお願いいたします。生命保険協会は4年連続でキャリア甲子園に参加いただいていますが、改めて生命保険とは何か、教えていただけますか。
日下部:よろしくお願いいたします。将来起こるリスクに備えることを「保険」と言いますが、大きく分けて自動車や住宅などモノにかかる保険を損害保険、命や体にかける保険を生命保険といいます。突然の事故や病気、自然災害など、私たちの生活には予想できないリスクが存在します。私たち生命保険協会は「相互扶助」の理念のもと、一貫して、国民の皆さまへ安心を提供し、国民生活の向上を支えるべく取り組んできました。
周藤:私たち生命保険協会は、国内にある生命保険各社が加盟する業界団体です。現在では42社の生命保険会社があり、全国には24万名を超える営業職員がいます。そういったネットワークを通じて生命保険会社は年間約30兆円の保険金等をお支払いするなど、社会保障を補完して人々の生活を支える社会基盤として重要な役割を果たしています。
ーさきほど、「相互扶助」という言葉が出てきましたが、「相互扶助」とはなんでしょうか。
日下部:保険に加入しているお客様同士で相互に支え合うという意味で、私たち生命保険業界が大切にしている考え方です。実際に私が以前に体験したお話をさせていただきます。私たちの生命保険にご加入いただいていたあるお客様が亡くなられました。その方は一家の大黒柱だったので、残されたご家族は仕事を通じた収入が途絶えてしまうことになります。ただ、生命保険に加入いただいていたので私は保険金のお支払い手続きをさせていただくことができました。その後ご家庭に訪問させていただくと、奥様が「このお金でなんとか子供を大学まで行かせてあげることができます。本当にありがとうございました」とおっしゃられたのです。保険に加入されている皆様が出しあったお金が、ある一つの家庭を金銭的に支援した、ということです。
まさに相互扶助の力が発揮された瞬間を、私自身が目の当たりにしたのです。
ーなるほど、素晴らしい考え方ですね・・・。
周藤:相互扶助は「誰かが困ったときに備えてみんなでお金を出し合う」という考え方です。お客さま全体から私たちがお預かりする保険料総額と、私たちがお客さま全体にお支払いする保険金等の総額はほぼ一致しています。相互扶助という精神性は海外の生命保険でも同じですが、日本はその傾向が特に根強いかもしれません。国際的に見ても日本の生命保険業界の規模は大きく、進んでいるといえます。日本人の中に助け合いの精神があることが原因の一つかもしれません。
ー今、お客様が払った保険料と生命保険会社が払った保険金等はほぼ同じ、というお話がありましたがそれでは会社として利益が出ないのではないですか?
日下部:実は生命保険会社には機関投資家という一面があります。それが今いただいた質問の答えに近いのですが、私たちはお客様からお預かりした大切なお金を、これから成長しようとしている会社や不動産などに投資をしています。生命保険に加入いただいているお客様に何かあったときにしっかりとお金をお支払いするために、お預かりしたお金をただ生命保険会社の手元に置いておくのではなく、資産運用を通じて増やしていかないといけません。さらに、社会貢献度が高い、サステナブルな事業や会社に投資することでその会社も成長しますし、中長期的な社会の発展を支援することにも繋がっているのです。
■マイナビキャリア甲子園出題テーマに込められた思い
ーありがとうございます。それでは生命保険協会が今回マイナビキャリア甲子園のテーマに込めた思いを教えてください。
日下部:マイナビキャリア甲子園2022の大会テーマは「NEXT GATE」ですよね。実は私たち生命保険業界もまさに今、転換期にあると考えています。人生100年時代を迎え、少子高齢化、グリーン化やデジタル化等の社会の構造変化が起きています。また晩婚化・非婚化・一人世帯の増加や女性の就業率拡大により、ライフスタイルや価値観・働き方の一層の多様化が進むことで、ひとり一人が本当に大切にしたいものを考えるきっかけにもなったと考えます。
それに加え新しい生活様式もどんどん広がっています。非対面でのデジタルサービスの拡大や、学びの場・勤務地に捉われない生活など、これまでは考えられなかった選択肢が増え、新しい社会や未来を創造する可能性が生まれました。そうした状況下で私たちは「ライフスタイルや価値観の多様化が進むこれからの社会」を新しい社会と捉えました。社会が変わり、人間社会が変わる時、生命保険協会もまた次の姿へ進まなくてはなりません。そうした背景で、今回のテーマを設定させていただきました。
ーなるほど。しかし変化の中でも相互扶助は大切にしたい考え方ですね。また念のためですが、いわゆる従来の生命保険の領域を外れたアイデアは認められませんか?
周藤:相互扶助の理念は意識してほしいですが、それに捉われなくてもよいと考えています。例えばですが、最近では、健康増進を頑張っている人には保険料が安くなるような保険サービスも出てきています。トラディショナルな考え方に捉われて新しい可能性を制限してしまうのではなく、自由に発想してほしいですね。保険会社も社会の変化等を踏まえて次のステップに進もうとしています。アイデアを考える際には、命、健康、人生など、人が介在する領域で幅広い提案をしてほしいなと思っています。
ーテーマの中に「寄り添った」という言葉が入っているのが生命保険らしいなと感じました。
日下部:そうですね、私たちの商品は、時代や手法が変わっても人の人生を支える商品であり、これは生命保険に関わる全職員の共通ワードです。会社都合ではなく、可能な限りお客さま第一で最優先することがこの業界の哲学。単にビジネスライクな話ではなく、大切な人の人生に大きな変化があったときに自分なら何ができるか、それを真摯に考えていただくとヒントになるかもしれません。
周藤:みなさんの思い、アイデアに生命保険会社の強みをプラスしてみてほしいですね。例えば、生命保険会社は日本全国にあります。全国の津々浦々に職員がいて、その土地に根ざしたサービス展開をしたり、各自治体と連携してその土地に住んでいる方たちのお手伝いをしています。そんな日本全国にいる生命保険の職員をみなさんのアイデアに活かすこともできます。きっと生命保険ならではのアイデアになるのではないかと思います。
■高校生に期待していることは?
ーありがとうございます。それではマイナビキャリア甲子園に出場する高校生に期待していることを教えてください。
日下部:最も期待していることは、固定概念にとらわれず、課題を自分事として捉え自由な発想で斬新なアイデアを出してほしいということです。でもアイデアを生み出すためには、自分自身で情報のインプット量を増やしたり、チームメンバーと失敗を恐れずに様々な議論をしたり、多様な価値観の人と会話をしたり、前提や思い込みを一旦ゼロにして考えることも有効かもしれません。このアイデアを生み出すプロセスは、まさにビジネスの世界でも同じことが言えます。みなさんが将来どんな仕事につくにしても、あらゆる職種で必要とされるプロセスです。今回のチャレンジを通じて非常に貴重な経験ができると思います。
周藤:みなさんにはこれから長い人生が待っていますが、高校生という早い時期から将来への備えについて考える機会を増やしていただくことはとても大切です。マイナビキャリア甲子園の経験を通じて、生命保険を身近に感じていただくとともに、保険会社の社会的意義の大きさや事業領域の広さを感じていただけると嬉しいです。皆さんから提案いただいたアイデアについては、私たちは真摯に受け止めて向き合っていきますので、ぜひ素敵な提案を待っています!