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マイナビキャリア甲子園2022最後の1社はJA全農。2022大会で初めて参加したJA全農のテーマは「日本の農業」だ。深刻かつ壮大なテーマだが、”食べる”ということは私たちの生活の根幹にある行為でもある。身近でスケールの大きな”食べる”そして”農業”というテーマ。JA全農の宮浦さんのインタビューで感じ取ってもらいたい。(取材:羽田啓一郎)*この文章は2022年10月に取材した情報をもとにしています。
お話を伺った方
宮浦 一騰さん
地方で生まれ育ち、自宅での農作業を手伝っていたことから農業に興味を持つように。進路選択の時も自然に農学部を選択した。大学では農芸化学(農薬化学)を専攻し、修士の学位を取得したのちに技術職としてJA全農に入会。配合飼料の分析や品質管理、営業などを経験したのち、現在の広報の仕事に。
JA全農とはどういう組織なのか?
ー本日はよろしくお願いいたします。JAというロゴマークは街中で見かけることも多いですが、どういう組織なのか実は知らない方も多いと思います。JAやJA全農について、改めて教えてください。
宮浦:よろしくお願いいたします。JA(農業協同組合)とは農業者が互いに助け合っていくことを目的に設立された協同組合で、地域ごとにJAが存在しています。農家は、農業を営むにあたって資金や資材などを調達する必要があります。それ以外にも施設を建てたり、販売先を確保したり様々なことが必要になります。ですので、JAが農家に必要なものやサービスを提供しています。その中でJA全農は農畜産物の流通や農業を営むのに必要な資材の供給といった事業を全国的に担っている組織です。
ー必要な資材の供給とはどういうことでしょうか?
宮浦:農業に必要な肥料の調達や配送を農家さんが自分でやっていては大変ですよね。そこで我々が原料を海外から調達し、工場で加工して、各地域のJAを通じて農家さんに供給しています。JA全農全体として仕入れと流通を行うことで、農家さんは負担が減り、また安定的に肥料を仕入れることができるのです。また農作物の販売もJA全農がお手伝いしています。市場に流通させる役割もありますが、農畜産物の直販施設を設けたり、量販店や生協に直接販売したりしています。このように、私たちJA全農は生産から販売まで、食に関するすべての物事にアプローチできることが強みです。
ー農家が1人だと困難なことを組織としてサポートしているというわけですね。よくわかりました。では国内が事業の活動範囲なのでしょうか?
宮浦:日本の農家のための組織ですが、事業としては海外展開もしています。ひとつは、原料の調達です。海外に拠点をもち、肥料や飼料などの原料を輸入しています。もうひとつは、輸出です。日本の美味しい米や、和牛、卵など、日本の農畜産物を海外に輸出しています。例えば日本の和牛をアメリカでしゃぶしゃぶにして食べてもらうために、アメリカに肉のカットからパッキングまでできる拠点を作りました。召し上がっていただいた海外の方の反応はかなり良いですよ。日本の農畜産物を海外に広げ、世界中の皆様にも日本の農業の素晴らしさを知っていただきたいですね。
マイナビキャリア甲子園のテーマに込められた思いとは?
ーありがとうございます。では今回のマイナビキャリア甲子園のテーマについて教えてください。”サポーター”という言葉が入っていますが、この言葉が入った意図はなんでしょうか?
宮浦:日本の農業や生産者である農家の皆さんを”応援”してほしいからです。私たちが日々口にしている食べ物は、どこかの生産者が作っています。高校生の皆さんにも、自分の”食べる”が誰かと繋がっているという意識を持っていただきたいのです。皆さんをはじめ、多くの方が食事する時にその素材を作った人を感じてくれれば、日本の農業の状況も改善していくかもしれません。そんな思いを込めて”サポーター”という言葉を使いました。
ー日本の農業は課題が多いと言われています。さまざまな要因が絡む難しい問題だと思うのですが、端的にいうと日本の農業は何が問題なのでしょう?
宮浦:おっしゃる通り本当にさまざまな問題がありますが、主に三つの問題があると私は考えています。
一つ目は農家が減少していること、とりわけ少子高齢化が進む中で若い農家が減っているということです。もちろん新規就農される方もいらっしゃいますが、少しずつ減っている。
就農される方が減っている原因にもいろいろあると思いますが、皆さんは日常生活の中で農業を意識することってあまり多くないのではないでしょうか。もしかすると、普段の意識にないがために、進路選択の時に農業という仕事が選択肢としてなかなか出てこないのではないのかなとも思います。
ーなるほど、先ほど伺った”サポーター”の意味も、私たちが農業を意識することに繋がっていきますものね。
二つ目の問題は、円安や原料高の影響で国内の農業で使う様々な資材もコストが上がっていることです。
三つ目の問題が消費量自体の減少です。日本の少子高齢化の影響や食の多様化など様々要因がもあるかもしれませんが、ここ数年はコロナで外食が細くなってしまいましたし、農畜産物の消費量の減少に対しては、輸出も含めて本当にいろいろなことに取り組んでいかないと農業の将来にかかわる問題です。
ーいずれも一時的なものではなく、深刻な問題ですね・・・。その分、この問題に対して取り組むことの意義は大きそうです。
宮浦:そうですね、実は農業は”食べる”ということ以外にも実は大きな役割を果たしています。例えば、日本の農業は国土の保全にも繋がっているんですよ。日本は雨が多い国ですが、お米を作る田んぼで水を蓄えることでダムの役割をしています。田んぼにはたくさんの昆虫やカエルなど色々な生き物が生息していますが、田んぼでお米を作っているということが、それらの生き物たちの住みかとなって生物の多様性、生態系が保つことにもつながっているのです。
また農業はそれぞれの地域の文化的側面も持っています。各地の伝統行事であるお祭りには、その土地由来の食物が祀られたりしますし、例えば同じみかんでも地域によって品種が異なり、それが旅の面白さにも繋がってきます。”食べる”という行為は人間の生活の中心だからこそ、”食べること”以外の多方面にも影響を与えていく。農業を通じてこうした大きな問題に関心を持って取り組むことは、今後の日本の未来を楽しく豊かにする意味でもとっても大きな挑戦となるでしょう。
マイナビキャリア甲子園に挑戦する高校生に意識してほしいこと
ーありがとうございます。それでは最後に、高校生に意識してほしいことを教えてください。
宮浦:今回、テーマの中に「10~20代」という制限をかけさせていただきました。これはつまり、皆さんの周りにいる人たちのことを考えていただきたいからです。先ほどもお話ししましたが、”食べる”ことは私たちにとって日常的なこと。社会問題として訴えかけるような重苦しいものでは広がらないし続きません。皆さんが普段一緒に生活している人たち、仲間たちが、「問題」など気にせずに楽しく食べられる状態をいかに作るかが重要です。楽しくたくさん食べていれば、それが農家のためになり、そして日本の農業全体を救うことになるには、と意識してほしいですね。
ー不特定多数の社会ではなく、身近な人たちのことを観察し、考えることが重要になりそうですね。
宮浦:そうですね、皆さんの身の回りの人たちが起点となって動いていくサービスやビジネスがいいですね。まずは小さなアイデアでもいいので、そのアイデアをJA全農の強みを使うとどのようにパワーアップしていくかを考えてみるといいかもしれません。全農のWebサイトには、今年4月から発行している社内報「Minorinote(みのりのおと)」や、事業の概要をまとめた「全農リポート」・新聞に掲載した記事などがありますので、皆さんのイメージを落とし込んでいく際に参考にしてみてほしいですね。